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4・初めての国内視察
4-28・見つめ直すこと⑨
しおりを挟むルーファとアルフェスの子供は二人いる。
そして二人共をアルフェスが産んでいた。ルーファではなくて。
つまり結局相手がルーファであってもアルフェスの性質は変わらず、そしてルーファはそんなアルフェスに、魔力を注ぐことが出来たということだ。
それは決してティアリィには出来ないことだった。
なにせティアリィも言ってしまえば同じ性質。おそらく今、ミスティ相手にという話になっても、それは難しいことだろう。
加えてそこまでの強い気持ちがミスティに対してでさえない。
当然アルフェスにも持てず、11年前はアルフェスに随分辛い思いもさせてしまった。
アルフェスの、自分へと向かう好意に気付いていたのに。
ままならないものだな、そう思う。
アルフェスからするとティアリィは裏切り者だろう。
ルーファが、彼女の価値観と正義感、何より行き過ぎた親切心により、ティアリィとアルフェスは離れた方がいいと判断し、そのように働きかけた時、ティアリィはこれ幸いとそれに乗っかった。
決してそんなこと望んでいなかったアルフェスの気持ちを考え、ルーファを諫めるのではなくて。
ティアリィにはそれが出来たのに、敢えてそうせず放置したのだ。
それはきっとアルフェスにとっては、ひどい裏切りに思えたことだろう。
わかっている。
わかっているからこそ気まずく、これまで親しく話すことをしなかった。
交流が全くないわけではなくとも、当たり障りのないものに終始していて。
なお、その理由の一端として、ミスティが嫉妬心をあらわにするという理由もあったりはするのだが、ティアリィはそれについては、アルフェスが元自分の婚約者という関係性ゆえだと判断している。
そしてそれが単なる言い訳に過ぎないこともまた、同時に自覚していた。
そんなアルフェスと二人きり。
船は入り江から少し離れていて、勿論、お互いが視認できる程度の距離で、それほど遠くまで漕ぎ出しているわけではない。
護衛を伴って遊ぶにも適切な距離と言えただろう。
お互いに伴侶とは別な存在と共にいても、視界を遮るものの何もないこの状況であれば、誰に何を言われることもない。
二人きりと言っても、密室にいるのでもなければ、周囲から人払いをしているわけでもないのだから。
だけど話す言葉は、それほど大きな声でなければ届かないことだろう。それぐらいの距離だった。
周囲には波の音が響いている。
おそらくはそれがちょうどよく、話し声をかき消していくことだろう。
絶え間ない潮騒。
人ごみの喧騒からは遠くとも、海は決して静かではなかった。
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