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4・初めての国内視察
4-23・見つめ直すこと④
しおりを挟むそれが6年前。……――否、もうそろそろ7年経つだろうか。それぐらいは前の話。
自らの気持ちを自覚し、混乱した俺はそれまでと同じようにはミスティを受け入れられなくなって、そして。
今もきっと、まだ混乱したままなのだろう。
だからきっと、こんなことになる。
否、もしかしたら他にも原因はあるのかもしれない。いずれにせよきっと、俺がわかっていないからなのだ。
俺が何かを、わかっていないから。
それが何かはわからないまでも、それだけはわかっている。
ティアリィはそんな風、思考を巡らせ続けていた。そしてそれは概ね大きくは間違ってはいないのだ。
ティアリィには自分が、こと自分に向けられる好意に関しては時折ことさらに鈍感なのだという自覚がなかった。
だからこそミスティが苛立ちをあらわにした理由に思い至らない。
つまりはただの嫉妬なのだとわからない。
ただ、わけもわからず乱暴に扱われた。それがひどくショックで、わけがわからなくて。そうしたらアーディが少し距離を置いて落ち着いた方がいいと言った。
ティアリィの認識はそこで止まっている。
だけど、アーディの言うとおりだとも思えて、だからこそ息子の言うがままに従った。
何よりティアリィ自身、落ち着けていないのは本当だった。
6年、否7年近く前からずっと。そう、ずっとなのだ。
ティアリィはいまだに、自分の感情に振り回されている。
それを消化する時間を、与えられない所為で。
自分で自分の感情についていけていないというのに、ミスティはティアリィにそんな時間を与えてはくれなかったのだ。
ずっと好きなのだと。執着しているのだと、言葉でも態度でも示し続けてくれることそのものは、正直嬉しいとそう思う。だけど、だからと言って、ならその好意をそのまま受け入れることが出来るのかと言われればそれはまた別の話で。
ティアリィはこれまでになく穏やかに旅程を楽しみながら、そうやって少しずつ自分と向き直り続けた。
妹と、幼なじみと、時には子供と、甥っ子と、じっくりと揺れ合う間も、頭の片隅には常にミスティのことがある。
彼へと向かう自分自身の心があった。
考えない、それは出来ない。
だって、楽しいことがあったら、美しい景色を見たら、美味しいものを食べたら、そんな色々なことを共に感じたい、そう思うのはやはりミスティなのだから。
考えないことなんて出来なかった。
逆に何か困ったことがあった時にも、無意識にミスティに意見を聞きたいと思ったりもする。
そんな自分を自覚しては、自分の中のミスティという存在の大きさを痛感した。
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