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4・初めての国内視察
4-22・見つめ直すこと③
しおりを挟む視察は順調に進んでいく。
とは言え、何もないわけではない。
細々としたことはいろいろとあった。問題と言えるようなことも、そうは言えないぐらい些細なことも。良いことも悪いことも。それでも大きく予定が崩れることのない旅程に、俺はもしかして生まれてはじめてではないだろうかというほどの安寧を感じていた。
そう考えると、俺はやはりどこか追い詰められていたのかもしれない。知らず知らず、心が疲弊していたのか。
そうして考えるのは、どうしてだろう、ミスティのことばかりだった。
幼い時からずっと一緒だった。
4つだったか、5つだったか。初めて会った時から。
はじめは遊び相手として。そのうち学友として。
やがて学園に入学してからは、もっと更に、共に行動していくようになる。
クラスも同じなら授業もほぼ同じ。放課だって、生徒会室で共に過ごす。
勿論、それぞれに別な用事があって少し離れることぐらいはあったけれども、それでも多くの時間を隣で過ごした。
俺はミスティのことを親友だと思っていた。一番心を許せる友だと。あるいは兄弟か家族のようにも思っていたかもしれない。実際に親戚ではあったし。
あくまでも仲のいい幼なじみだった。
それが本当は違ったのだと知ったのは卒業してからのこと。
少なくともミスティは俺のことを、そんな風には思っていなかったのだと思い知ったのは、実際にミスティに触れられてからだった。
わけがわからなかった。
俺からすると突然だったし、青天の霹靂とはまさにあのことだ。そう思った。ちなみに今もそう思っている。
ミスティは俺のことを伴侶にと望んでいた。
共に歩んでいく相手として。
親友やただの幼なじみ、親戚などではなく。
初めて会った時からずっと、それを願っていたのだという。
周囲もみんな知っていた。
でも俺には他に婚約者がいたから、それがどうにかなるまではと、ミスティは自らの衝動を押し込めていたのだと知った。
まるで一瞬にして別人にでもなってしまったかのよう。
以降、俺への行為を隠さなくなったミスティに押されてそのまま。
俺はミスティの伴侶となっていた。
勿論、何事もなくというわけではないし、やっぱり俺はどうやら自分の感情にも疎いところがあるみたいで、自覚なくおかしなことになったりもした。
ほんの些細なことで引っ掛かって、ミスティを受け入れられなくなったりだとか。
それでも何とか折り合いをつけてきた。
俺自身の心の中で。
その数年後に、俺はやっとミスティへとそういう意味で惹かれているのだと自覚した。
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