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4・初めての国内視察
4-21・見つめ直すこと②
しおりを挟む子供達を見る自分の横顔に注がれる視線を感じる。
妹からのそれ。
ティアリィはなんだかその視線がひどく面映ゆかった。
「母様ぁー!」
コルティがこちらへ向けて手を挙げた。
呼ばれるがままに幼子の元へ足を進めていく。
「どうしたの?」
「見て下さい! お魚さんがいますわぁ! 見たこともないお魚さん」
さされた指の先には湖。ちなみに船には今から乗る予定。
「ああ、レーヴ、そんなに覗き込んではダメよ」
ルーファがたおやかに注意しながら、すっと、コルティの横で湖をのぞき込んで落ちそうになっている幼子を抱き上げている。
「そうだね、お魚さんだ。何のお魚さんだろうね。でも、コルティも、落ちないように気を付けて」
便乗するかのよう、ティアリィもティアリィで注意を口にすると、コルティはひょいと肩を竦めた。
「はぁい」
素直、というには少し不承不承という風にも聞こえたけれども、注意を受けた幼子などこのようなものだろう。
それでも一歩足を後ろに下げて、湖からは距離を取っている。
そんなコルティの横に並びながら覗き込んだ湖は陽の光を受けてキラキラと輝いていた。
水の影がそれぞれの肌に映る。
ああ、キレイだ。
ティアリィは何も遮るものなく、ただ単純にそう思った。
見るとぽしゃん、コルティの言うように見たこともない魚が泳いでいる。
あれは何の魚だろうか。重要のようでそうでもない。尾ひれが長いがフナの一種だろうか。バカでかい青緑の金魚か何かにも見える魚がすぃーっと湖の真ん中の方へと泳いでいく。
「あー、行っちゃったぁ」
残念そうなコルティの言葉に頷いた。
「ほんとだね。でも今から船に乗るから、きっとまた見れるよ」
「ほんと? 楽しみ!」
無邪気に笑う幼子に柔らかく笑みを返して。
「さ、船に向かおう」
近くの桟橋に促す。
穏やかな時間。隣にはレーヴを抱いたルーファ。
護衛だからだろう、アルフェスは少し離れたところではしこく周囲を見回している。
ちなみに勿論、護衛はアルフェス一人ではなく他にも何人もいて、それぞれが皆充分な警戒を持って任に当たっていた。
もっとも、それほど警戒しなくとも何かがある可能性など極端に低いのだけれども、それでもそれは彼らの仕事だ。
こういったなんでもない穏やかな時間を過ごしていると、ティアリィは確かにルーファが言ったよう、少し気持ちが晴れているような気がした。
煮詰まっていたつもりはない。でも、少しだけ思考を、こうしてまったく日常とは関係がない所へと置くのは確かによかったのかもしれない、そうも思って。アーディの慧眼には本当に恐れ入る。
優秀過ぎる自らの息子に、心の中で感謝を捧げた。
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