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4・初めての国内視察
4-16・休暇中の暗躍⑨(アーディ視点)
しおりを挟むミスティなりの親心。それを無下にするのはアーディとしても心苦しい。
ただ、アーディたちはアーディたちで、ティアリィを思えばこそ。
勿論、ティアリィがこんなことを知って気にしないはずがなく、だからこそ知らせるつもりはなく。ミスティもきっとわざわざティアリィに伝えたりしないだろうとアーディはそう予測していた。
「それに最終的には父様に、全部ひっかぶってもらわないといけないかもしれないしね」
ぼそと呟く。なにせそれも踏まえて、事前に父親に伝えたのだから。父親もおそらくは理解している。
「アーディ兄様? 何か言った?」
口の中で呟いただけだったので、ミーナには聞こえていなかったらしい。訊ねられ、首を横に振った。別に隠すようなことではないけれども、わざわざ伝えるほどのことでもない。
「ううん、なんにも」
「そう? それにしても、父様からの許可がないんだったらこっそり行くしかないわねー」
「そうだね。そっちは協力、仰げそう?」
「あの人達は基本、私のしようとしてることに反対したりしないよ」
「それはそれでどうなの?」
ミーナの言葉に頷いて、逆に問い返せば返ってきた答えが答えで、アーディは思わずきゅっと眉根を寄せてしまっていた。
そっちはつまり、ミーナが城下で懇意になった商会や冒険者等の協力である。
彼らが基本、ミーナに反対しないとは、いったい城下で彼女は何をしているのか。
それに関しては詳しくなどアーディも知らず、おそらくミスティもティアリィも、正しく把握しているわけではないのだろうと思われた。
つまりミーナが何をしているのか知っているのはミーナのみ。アーディなどよりよほどの問題児だ。
だが、こと今回のようなことや、少し前、ティアリィとピオラがファルエスタに向かった際に受けた商会からの協力など、あれも結局はミーナの手配で、そういった時には非常に頼りになるのも確かな話。ミーナ自身も、基本的には助力を惜しんだりしないのだ。
「えー、人徳って言って欲しいなぁ」
「じゃあ、そういうことにしておくよ」
返された軽口にアーディは肩を竦めて返事をする。
人徳、というのなら正しく人徳なのだろう。
伝手の多さと顔の広さは、アーディでは持ちえないものなのだから。
「ま、伊達に城下に行ってないってこと。王宮にいるより面白いよ? アーディ兄様も今度一緒に城下に行く?」
「遠慮しておく。そっちはお前に任せておくよ。これでも、僕は僕でやることが多いんだから」
本気ではない誘いにはこちらも本気ではない返事を返して、ミーナがおかしそうに笑うのに、アーディも同じ顔で笑い返した。
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