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4・初めての国内視察
4-6・知らなかった変化
しおりを挟むそうして、思えばアルフェスと、こんな風に会話すること自体随分と久しぶりなのではないかということに思い至った。
ルーファとは学園を卒業した後、程なくして王宮に居住を移してからも、それなりの頻度で交流を続けてきた。反面、アルフェスとは、彼の職が王宮に所属する騎士であるにもかかわらず、私的な会話をほとんどしてこなかったのである。
それはアルフェスが元々ティアリィの婚約者であり、学園の卒業記念パーティで、その婚約がルーファによって破棄に至った際、そもそもそんなこと希望していなかったアルフェスが、ティアリィに縋る視線を寄越していたにもかかわらず、それに構わず、妹が希望するままに婚約破棄を受け入れたことが確執の一端となっているためだった。
その上、ティアリィはそのまま、そのすぐ後に王家へと嫁いでいる。
アルフェスからしてみれば、それらはひどい裏切りに見えたことだろう。
たとえ婚約中はミスティと一切そのような関係ではなかったとしても。アルフェスにはそんなものは関係なく、元よりティアリィとの婚姻を望んでいたのである。
だが、ティアリィはアルフェスとの婚姻を望んでおらず、だからこそ妹からの糾弾をこれ幸いと抵抗せず諾と受け入れたのだが、いずれにせよアルフェスにとっては、受け入れがたい話だったはずだ。
そもそもそれ以前からティアリィはアルフェスを可能な限り避けるようになっていて、それ以降も関係は改善されないまま、今に至っている。
ミスティがティアリィとアルフェスが近づくことを良しとしなかったという側面もあった。
なお、ルーファとアルフェスが婚姻した今では義理の兄弟となっていて、勿論、全く顔を合わせないということはなかったのだけれど、顔を合わせても交流をほとんど持たなかったのである。
そして、今回はそういうわけにはいかないことは明白で。
だからこそ現に今も、アルフェスはティアリィへと苦言を呈したわけなのだが、この苦言を呈すこと自体が、10年と少し前までは考えられないことだった。
ティアリィとアルフェス、ルーファは幼なじみだ。ほとんど共に育ったと言っていい。
子供の頃からアルフェスは意志が弱く、優柔不断な所があった。
だが、この様子を見る限り、今はそうではないのだろう。それが良いことなのか悪いことなのかはともかく、そう言った所からもティアリィは、10年と少しという月日が流れていることを、つくづくと痛感せざるを得ないのだった。
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