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3・偽りの学園生活
3-78・嫉妬の対象
しおりを挟むその話をピオラにしたら、何故かたいそう笑われた。
夜、ティアリィは王宮に行かなくなり、少し前より少しばかり、ピオラやコルティとの時間がよりとれるようになっていた。
特にピオラはファルエスタにいるままで、しかもしっかりしている部分もあって、この頃は少し放置気味になっていて。実は気にもなっていたのである。
その場にいたコルティは何とも言えない顔をしてティアリィを見つめるばかりだし、今夜も通ってきてくれていたアーディは笑おうとして失敗したみたいな顔をしている。
いっそピオラのように笑ってしまっても構わないのに。
と、言うか、何故笑うのか。
「お、お母様ったら、本当にそれをユ、ユーファ殿下におっしゃられたんです、か?」
ふふ、ふふふ。珍しいぐらい大きく笑いながら、ピオラが何とか言葉を紡いだ。
アーディは溜め息を吐く。
「ピオラ姉様、ウケすぎですよ」
「だ、だって、アーディ……ふふ。あー、おかしい。貴方はおかしいと思わないの?」
流石に見咎めたアーディの言葉にも、ピオラの笑いは収まらない。
「どうしてそんなに笑うんだ」
憮然とした顔のティアリィに、またピオラは噴き出して。
「ほ、本当にお分かりにならないんですのね……あはは!」
ユーファ殿下もお気の毒に。
更に続けて、そう言った。
ユーファ殿下が気の毒? どうしてそんな話になるのだろう。
だってティアリィは、何故かユーファ殿下から夏季休暇中の誘いを受けて、自分を誘うぐらいならピオラを誘ってくれと答え、ユーファ殿下も頷いた。なら、ピオラにも伝えておかなければと。そう考えただけだったのだ。
なのに。
その話のいったいどこに、それほど笑う要素があったというのか。アーディも、コルティでさえ、ピオラが笑っている理由がわかっているようで、周りを見回すと、侍女も護衛も、ピオラの友人たちも、なんとも言えない顔をしている。どうやらわからないのはティアリィ一人であるらしかった。
そんな状況、面白いはずがない。
むしろ理解できないし、わけがわからない。
笑うばかりのピオラに見切りをつけたのだろう、アーディが書類の束を持ったまま肩を竦め、ティアリィへと向き直った。
「母様、この間、僕がお話しした内容、覚えていますか」
「この間?」
「あの朝の話です」
アーディとはほとんど毎日何かしらのやり取りをしている。その所為で、具体的に何の話なのかさっぱりわからなかったのだが、あの朝と言われてようやく思い至った。
ミスティと。最後に顔を合わせた夜の、その更に翌朝の話だろう。
「言ったでしょう? ユーファ殿下は、父様の嫉妬の対象になる。これも同じお話しなんですよ」
それ以上は流石に僕の口からは言えませんけど。
そう告げられても。ティアリィにはやっぱり、意味が解らないままだった。
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