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3・偽りの学園生活

3-77・夏季休暇の前に

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 リアラクタ嬢はジアレフ司教が来てからはめっきり大人しくなってしまった。
 余程、何か叱りつけられでもしたのだろうか。わからないけれども。
 伝え聞く所によると、夏季休暇中も二人ともキゾワリには戻らないらしい。

「少しこちらでやることがございまして」

 などと、にっこり笑って言っていたけれども、それはいったい何なのだろうか。よくない事じゃなければいいとティアリィは思う。否、むしろ。

「こちらから一度、話を聞いて見てもいいかもしれないな」

 ジアレフ司教もリアラクタ嬢も。どう考えても生国に思う所があるようにしか見えず、ならばティアリィがするべきなのは、そちらの話を聞くことだと、そう思えてならなかったのである。
 特に、リアラクタ嬢には敵視されているようなのでしっかりと会話を交わすことは難しいかもしれないが、ジアレフ司教は違うだろう。
 何か思惑があるとして、指示を出すのも動くのもおそらくは司教の方。
 こちらは夏季休暇が始まる前に一度機会を設けようと決めた。
 ファルエスタの王城の方はあまり芳しくない状況であるようだ。
 それというのも、怪しいとした宰相を問い詰める材料を国王夫妻はいまだに入手することが出来ておらず、ティアリィが見ていた限りでも、明確におかしな行動はとっておらず。なかなかに手を出しあぐねている。
 少し長い目で見る方がいいかもしれないというのは、ルディファラ王との話し合いで出てきた意見である。
 ファルエスタに関しては夏季休暇中も、あるいは幾度か訪れた方がいいかもしれないと考えていた。
 そして。

「ティールは夏季休暇、どうするんだい」

 ティアリィ、否、ティールの目下の懸念はこの、ミスティの嫉妬の原因となったというユーファ殿下である。
 夏季休暇。
 それをどうしてティールに聞くのだろう。ピオラではなく。むしろティールの予定を聞くことに寄ってピオラのそれをも探ってでもいるのだろうか。
 ティールはわからないなりに首を傾げ、だけど正直に予定を告げた。

「国に戻る予定になっています。仕事があって」

 国内視察という仕事である。
 当たり前に場所はナウラティス国内だった。
 ティールの返答に、ユーファ殿下は目に見えてしょんぼりと肩を落とした。

「そうなのか……残念だ。もし、時間が取れるようなら、少しでも共に過ごせないかと思っていたのだけれど」

 それこそ、どうしてティールと。親しくなった友人と過ごしたいということなのだろうか。そうであるならばわからないでもなかった。
 ティールは決してそうは思ってはいないけれども、ユーファ殿下からしたらティールは親しい友人のような認識となっていたとしても、特におかしな話でもない。

「ピオラ様ならあるいは、時間が取れる時も出てくるかと思いますが」

 ティールとピオラなら、正直な所、時間が取りやすいのは断然ピオラである。
 ティールの返答に、ユーファ殿下はしんなりと明確になんと言っていいのかわからないというような顔をして見せた。
 その顔はいったいどういう意味なのか。だけど。

「ピオラ殿下か……そうだね、一度彼女を誘ってみよう」

 ティールが伝えたからか、それとも他の理由か。ユーファ殿下がそう言ったので、ティールは、

「そうですね、それが良いと思います」

 微妙な顔のままのユーファ殿下に、不思議そうに首を傾げながら。こくりと生真面目に頷いたのだった。
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