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3・偽りの学園生活
3-58・休日⑨
しおりを挟む「みんな行ってしまったね」
護衛は残っているけれど、他は誰もいなくなっている。
ユーファ殿下に話しかけられ、ティールは頷いた。
「そうですね。女の子はこういうの好きだから」
可愛い雑貨や髪留めや。キラキラした小さい物。
嫌いな女の子は少ないだろう。多分、あのミーナだって、こういうお店を見るのは好きかもしれない。
「ティールは? ティールはこういうのは好きじゃない?」
訊ねられ、ティールはしばし返答に迷った。
正直、興味そのものがないので、好きか嫌いかなんて考えたこともない。
でも。
「可愛くてキレイだなって思います。そういうの、嫌いな人はいないんじゃないですか?」
たとえ興味がなくとも。だからと言って、嫌いというわけではない。あえて言うならばどうでもいいだけ。可愛いなぁ、キレイだなぁとは思うけれども。
「じゃあティールも、嫌いではない、ってことかな」
「そうですね。でも正直、興味もないです」
「はは。だろうと思った」
ありのままを告げるティールに、ユーファ殿下は笑って、にこと、何度目だろう、ティールに太陽のような笑顔を向けてくる。
眩しい。
本当にこの人は、両親のどちらにも似ていない明るさを持っているなと、暗いというわけではないが、かといって明朗な雰囲気など微塵も持ち合わせていない国王夫妻を思い出してしみじみとそう思った。
「嫌いじゃないなら、少し中に入って見てみないか? ここでぼーっと突っ立ってるのも通行の邪魔になるだろうしね」
商売の妨げにもなるかもしれないとまで言われては、ティールも頷かざるを得ず、そもそも子供達も店の中に入っている。
様子を見る必要があるとも思った。
「なら、少しだけ」
頷いたティールに、ユーファ殿下が手を差し出してきて。まさかこの手を取れとでもいうのだろうかと躊躇うティールに構わず、ユーファ殿下はそのまま鮮やかな手つきでティールの片手をさらっていく。
ぐい、引き寄せられ、エスコートでもされるかのように、腰の辺りに手を添えられた。
えっと、これは……。
内心で戸惑いながら、ちらとティールの手を取っているのとは逆側の手を見下ろす。
べたべたと触れてきているだとかいうわけではなく、あくまでも添えているだけ。
そう言えば学園でも移動の際、時折こうされるなと今更ながら思い出した。
普段は全く気にしていなかったのだけれど、改めて思い返すと、いつもも今も、これはもしや本当に正しくエスコートなのでは?
親切な人だとばかり思ってきたのだが、そもそも距離感がおかしな人だったのだろうか。
いくらティールの立場が賓客に含まれるとは言え、そもそもファルエスタに来た目的だってピオラの護衛ということになっている。
どう考えても、護衛には過ぎた対応だった。かと言って振り払うわけにもいかず、今更かと、ティールは内心で溜め息を吐くことしかできなかった。
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