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3・偽りの学園生活

3-55・休日⑥

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 ようやくコルティに気付いたらしいユーファ殿下が、ニコッと笑って膝をつく。どうやらコルティと視線を合わせれくれたらしい。
 途端、ユーファ殿下と一緒にいたおそらくは彼の護衛なのだろう男たちが、

「ユーファ様っ!」
「いけません、そのように膝をおつきになるなど、」

 と、口々にユーファ殿下を止めようとしたけれど、ユーファ殿下は彼らを、ちらと視線をやることだけで留めて。

「すまない、少しうるさかったね。こんにちは、はじめまして、お嬢さん。君の言うとおり、ティールの知り合いのお兄さん・・・・・・・・・でユーファと言うんだ」

 至近距離で微笑むとてもかっこいい初めて会うお兄さん・・・・に、しかしコルティは何も動じた様子を見せず、

「ユーファお兄さん? だったら、今度ピオラ姉様の旦那様になるお兄さん・・・・の愛称と同じ名前ね!」

 と、にぱっと、子供らしく破顔して答えている。

「ピオラ姉様?」

 ユーファ殿下がちらとティールの方を見上げてきた。
 ティールは頷いて。

「コルパティル第三王女殿下です。ピオラ殿下の妹の」

 短く、偽ることなく伝えると、ユーファ殿下は、なるほどと小さく納得の言葉を呟いた。改めてにっこりと、コルティへと笑いかける。

「よく知っているね。その、旦那さんになる予定・・のお兄さんだよ。もしそうなったら君とも兄妹になるね」

 確かに、ピオラとユーファ殿下の婚姻が成るとそうなる。ティールもそれを踏まえて、今、偽らずにコルティを紹介したのである。

「あら! そのお兄さん本人だったのね。私、違うのかと思ったわ。だって、ピオラ姉様も此処にいらっしゃるのに、まっすぐティールにだけ話しかけるんですもの。ティールしか見えていなかったの? まるで母様に対する父様みたい」

 ティールはコルティの発言に、なんと反応すればいいのかわからなかった。
 確かに、先程ユーファ殿下はティールの名前だけを呼んだのだ。ピオラ達も一緒にいたにもかかわらず。
 一見、無邪気にしか見えないのだが、これはもしや何か意図があるのか? いや、しかしコルティはまだ6歳、意図などあるはずが……と、そこまで考えて、しかしティールは先ほど、コルティが敢えてティールと呼んだことを思い出した。それと同時に、コルティと二つ違わないミーナや、そこから更に2歳しか上ではないアーディが、コルティと同じぐらいの年だった頃を思い出す。が、少し記憶を辿っただけで、何も参考にならないのだったと思い直した。
 あの子たちはちょっと特殊だ、きっと。そうに違いない。なら、ピオラは……ちらとそちらに目を向けると、彼女は不思議そうに少し首を傾げながらも穏やかに微笑むばかりで。今のコルティの発言を聞いても、その顔。
 と、言うことはティールの穿ちすぎだろうか。
 いずれにせよピオラが6歳の時も、おとなしすぎてコルティとは全然違っていて、やはり参考にはならなかった。
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