結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

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3・偽りの学園生活

3-47・納得できない諭し(リアラクタ視点)

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 リアラクタは唇を噛んだ。
 どうして。全く理解も納得も出来ない。どうして自分が注意を受けなければならないのか。

「なんとしてもとそうおっしゃったのは伯父さまですわ!」

 リアラクタはそれに従ったに過ぎない。
 必ずユーフォルプァ王太子殿下の妃に納まること。可能なら正妃、無理なら側妃でもいい。
 とにかくファルエスタ側からの希望として・・・・・・・・・・・・・・・、リアラクタは望まれなければならない・・・・・・・・・・・のである。
 その為に手段は選ばないこと。
 送り出すリアラクタによくよく言い聞かせたのは他でもない伯父だった。なのに。

「わかっている。私の考えは変わっていないよ、リャータ。だが、彼への敵意を、あんな場面で表に出すのはよくなかったと言っているんだよ」

 伯父は溜め息を吐きながら、疲れたようにそう諭す。リアラクタはぎゅっと眉根を寄せた。そんなことを言われても。

「なら伯父様はどうすればよいとおっしゃるの?!」

 泣きそうに揺れる声に、伯父の溜め息は尽きない。

「癇癪を起すんじゃない。隙を見せてはいけないと教えてきたはずだよ。君は王女なんだ。立場があることぐらい、わかるだろう?」

 伯父の言葉がわからなかった。立場とは何なのか。自分の立場とは、いったい。
 キゾワリ聖国、聖王の第十三王女。何処からどう見ても、軽んじられるに値する地位だった。
 そもそも、自分の姉弟が今、いったい全員で何人いるのかさえ、リアラクタは知らないのである。そんな国の王族に、いったいどれほどの価値があるというのか。それでも王族には変わりはないのだとリアラクタに説いたのは、他でもないこの伯父だった。
 父親たる聖王は、お世辞にも父たり得るような人物ではなく、顔を合わせること自体ほとんどない。そのくせ、リアラクタの寝所に数度、祝福を授けに・・・・・・訪れたことさえあるような父だった。
 もっともその度に伯父から教えられた通りの言葉で父に縋り、実際に寵愛を頂くこと自体は何とかまぬがれてきている。

『聖王陛下より直接祝福を頂く・・・・・・・など、勿体なく存じます。その上、聞く所によると、聖王陛下より祝福を頂いてしまうと、他国への縁戚などでお役に立つことが難しくなると聞いております。お役に立てる方法を、一つでもたくさん持っておきたいのです』

 どうかと、体に触れられる嫌悪に堪え、殊勝な態度でそう願ってやっと、最後の部分のみ逃れることが出来るばかりの有様なのだ。
 母は疾うに聖城にはおらず、顧みられることのないリアラクタを支えたのはこの伯父のみ。父よりもよほど父のような存在で。リアラクタは伯父の言葉だけは信頼している。
 自分と伯父の言葉以外を信じるな。そう説いたのもまた伯父だった。
 リアラクタは国になど戻りたくない。伯父の望みも同じだ。
 リアラクタが見る限り、リアラクタの企みの邪魔となる一番大きな要因はあの青年で、彼を排除したいと敵視することは何らおかしなことではないはずなのに。

「とにかく、そう敵視するばかりでは方法としてよろしくない。私も協力するよ。だから一緒に考えよう」

 諭すばかりの伯父に、リアラクタは何も納得できないまま、結局、不承不承ながら頷くことしかできなかった。
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