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3・偽りの学園生活

3-42・キゾワリからの使者

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 それから数日は、特に変わったことなど起きなかった。
 いつも通りティールはユーファ殿下と行動を共にし、いつも通りリアラクタ嬢に睨まれた。
 ユーファ殿下はすでに、リアラクタ嬢を見るだけでも顔をしかめるようになっていて、そんなユーファ殿下にティールは溜め息を吐くばかり。
 そうしたらユーファ殿下は、少し困ったように眉をひそめるのである。

「ああ、すまない、ティール。君を思い悩ませてしまって。キゾワリには連絡を入れたのだけれど、どうやら彼女に変化は見られないようだ」

 気遣ってほしいのはそこではなかったし、結局、国に抗議したのだなと、ティールは何とも言えない顔になった。
 互いに国を背負っており、またファルエスタの意向もある以上、ユーファ殿下の判断に、ティールはそれほど強硬に口を出すわけにもいかず、ただ残念に思うのみ。
 なにせリアラクタ嬢のしていることなど、ただ、少しばかりユーファ殿下に近づこうとして、かつ、ティールを目の敵にしている程度なのだ。
 実害など、実際に口頭でティールが罵られる程度にしか被ってはいない。
 大事にするようなことではないとしかティールには思えないのだが、ユーファ殿下の判断はまた違ったのだろう。
 そして、キゾワリに国として正式に抗議を入れてなお、リアラクタ嬢の様子に変化はない。
 その上、更に追加の使者まで来るという。
 キゾワリはいったい何を考えているのか。一度ファルエスタ側とも話をするべきかもしれないと思ううちに更に数日が過ぎていった。
 なお、ファルエスタの王宮側も、詳しいことは何も伝えられておらず、むしろ何かわかる度に律義にもティールへと早急に知らせるようにさえしてくれた。
 そこで分かったのは、訪れる使者がティールもキゾワリを通る時に出会った、あのジアレフ司教だということ。
 ジアレフ司教が他でもないリアラクタ嬢の伯父に当たるということぐらいである。
 以前に会った司教の顔を思い出す。
 リアラクタ嬢と似ている所があるようには見えなかった。だが、リアラクタ嬢が聖王と似ているとも思えない。
 実際に聖王と会ったことはないけれど、伝わってくる話の限りでは、特に容姿が優れた人物というわけでもないはずで、なら、リアラクタ嬢の母親と兄妹であるはずのジアレフ司教とが、似ていない兄妹なのかもしれなかった。
 また、フデュク商会からもたらされたキゾワリの内情は聞くに堪えないものばかりで、それについては、少し詳しい者を寄越すとのこと、その人物の到着を待つこととなった。
 リアラクタ嬢の周囲を探ってくれていた侍女曰く、彼女に変わった様子はないようで、もしやキゾワリからは彼女自身さえ、何も知らされてはいないのではないかとのこと。
 そんな中、キゾワリからの使者が到着したと、ティールの元へ情報が届いたのは、あれからちょうど一週間ほど経った頃のことだった。
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