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3・偽りの学園生活
*3-39・熱に誘う(ミスティ視点)
しおりを挟むミスティの触れ方はいつも強引だ。
いくら優しく、柔らかくあっても、ティアリィを待つことなどほとんどない。
触れる手が丁寧であることは、いわば前提のようなもの。その上、ほとんど必ずと言っていいほど、魔力を行使して来るのである。
おかげでティアリィは行為の時に意識をしっかりと持ち続けていられたことがなかった。
今もそう、くらくらと頭が惚けて、何も考えられなくなって、ミスティが与える刺激にだけ反応して、耐えることなど知らぬまま、喉からは艶めいた喘ぎを迸らせるばかり。
「ぁっ! ぁあっ……、ぁ……」
びくと体を震わせた。
すでに互いに服など身につけてはおらず、寝台の上。細い腰に片手を回し力の抜けきったしどけない伴侶の肢体を自身へと引き寄せるミスティは、真白い肌に、赤い花びらを裂かせていくのに夢中だった。
そうしていながら感じ入ってだろう、時折くっと力のこもるすんなりと伸びた長い脚を、辿るように指を這わせる。
しっとりと湿り気を帯びた肌は、ティアリィの興奮を示している。
勿論のように、ティアリィに触れる指には逐一魔力を纏わせた。
肌から注ぐ微力な魔力は、本来ならどんな影響も相手に与えないようなものでありながら、ミスティほどに身体操作に長けた者にとっては、相手を酔わせるに足るものとなり得るのである。
おかげでティアリィの意識はもはやない。
おそらく今は、ミスティの与える感触に溺れているばかりだろう。
「ぁ、ぁぁ……」
ひくん、ひくん、震える滑らかな肢体。それに触れるだけでミスティは堪らなくなって、少し前まで、よくぞこれに一月も触れずにいられたものだと、自分で自分が信じられないほどだった。
本当は片時も放したくないのだ。仕事も家族も国も皇帝業も何もかも放り出して、ただ彼といつまでも睦み合っていたい。
だが、そんなことは決してティアリィが許さないだろうことを知っていた。
だから。
足を這うミスティの指が、ついには他よりは少しだけ肉付きのいい臀部に届き、慣れた感触を楽しみ始めた。
指が僅かだけ肌に沈む。どこもかしこもうっすらとしたしなやかな筋肉に覆われ、余分な脂肪などどこにもついておらず、瑞々しく張りがあっても、ともすれば固い部分の多い細い肢体の中で、ここだけは微かな弾力があった。
と、言うより、ティアリィは少しばかり細すぎて、ミスティはむしろもう少し肉をつけて欲しいと思っている。
もっとも、ティアリィがティアリィであるのなら、ミスティにとっては他などどうでもいいことではあるのだけれど。ただ、あまりに細すぎると、容易く壊れてしまいそうな儚ささえ感じられて。時に不安になってしまうのである。
確かに今、ミスティは彼に触れているはずなのに。いつの間にかこの腕の中から彼という存在がすり抜けていってしまいそうで。
彼の容姿が、どちらかと言わずとも儚いと言える美しさを誇っているからだろうか。わからなかった。わからなかった、けど。
「ぁっ、ぁあっ」
充分に尻の柔さを堪能して、胸元にいくつもの赤い花を咲かせ、ようやく彼の腹の中へと指先を沈め始めた時には、ティアリィはすでに意識を茫洋と漂わせ、ただ小さく喘ぐばかりとなっていた。
「ティアリィ」
こんな風に蕩けている間のことを、いつもティアリィはほとんど覚えていない。
それはとりもなおさずミスティ自身が、魔力を駆使し、彼の意識をぼやかせているせいで。
「ティアリィ」
わかっていながらミスティは、今もまた、ティアリィがミスティの与える快感に追いつくのなど待たずに、彼をもっと更に激しい奔流の中へと突き落としていくばかりなのである。
それがいかに強引な手段であるのかを、しっかりと自覚していながらも。
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