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3・偽りの学園生活
3-32・対処に困る
しおりを挟む「ティール! 大丈夫だったかい?」
ユーファ殿下の元へ戻ると、殿下は心配そうにティールに声をかけてくれた。
ティールは肩を竦めてユーファ殿下に応える。
「うーん、まぁ、問題はないですね。いつも通りです」
リアラクタ嬢の様子を、詳しく伝えることははばかられた。
ただでさえ彼女にいい印象を持っていないらしいユーファ殿下からの心象を、ティールの発言で更に悪くしてしまいそうで。
それは決してティールの本意ではないし、リアラクタ嬢があまりに気の毒だと思ってしまう。
かと言って庇うようなことを言うのもおそらくは逆効果なのだろうなというのが何となくではあるがわかって。
結局ティールはいつも曖昧に誤魔化すことしかできなかった。
ならいっそ、リアラクタ嬢からの呼び出しなど無視してしまえばいいのかもしれないが、それはそれであんな目つきで睨み付けさせ続けるのもなんだか違う気がして。ティールに吐き出したくてたまらないといのなら、話を聞くぐらいならいいかとティールは判断していた。
それはおそらく得策ではないということに、実はティールだけが気付いていない。
このことを聞いたピオラやミディーなどは視線を逸らしたり、困ったように笑ったりなどしていたが、何故そんな顔をされるのかとティールは首を傾げるばかりだった。
なお、アーディやグローディには溜め息を吐かれたり、呆れたような目で見られたりしている。ミスティにはなんだかよくわからないが恐ろしすぎて伝えられていなかった。
ではどうするべきなのかという話になると、なかなか難しくはあるのだけれど。
そんな調子なので、ユーファ殿下に気遣われても、ティールは困るばかりだった。
かと言って、リアラクタ嬢の望むようにユーファ殿下から距離を取ることなどできるはずもない。
難しいなぁとのんきに考えていたティールは、リアラクタ嬢やユーファ殿下の方こそ、限界が近づいていることにも全く気付いていないのであった。
「ティールは本当に優しすぎるよ。彼女の件については我が国からキゾワリに正式に抗議してもいいんだからね」
その証拠にユーファ殿下がついにはそんなことまで言い始めているのだが、ティールはぎょっとして止めにかかる。
「まさかそんな! それほどのことではありませんよ。彼女はユーファ殿下をお慕いしているだけでしょう。それなのに大事にしてはお気の毒です」
つい、彼女を庇うような発言をしてしまうが、勿論それでユーファ殿下の彼女に対する心象が良くなることなどない。
ティールとしても、なら彼女の相手をしてあげて欲しいとまでは言えず、言わず。
「そうかい? でもあまりに目に余るようなら、こちらとしても何もなしというわけにはいかないからね。君は大切な賓客なのだから」
何とか今は引いてくれるようであることに感謝し、互いの国の国力などを考慮すると、当たり前と言えば当たり前のことを諭すように告げられ、ティールはかくかくと頷くことしかできなかった。
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