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3・偽りの学園生活

3-31・一方的な糾弾

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 こんなに険しい顔ばかりしていると、せっかくの可愛らしい顔が台無しだと思う。
 リアラクタ嬢は、見た目はいいのだ。それはもう、人形のように美しい。
 周囲に見目麗しい人間が多くいて、美しい容姿など見慣れているティールがそう思うのだから、よっぽどのことだろう。
 それほど見目のいい少女なのに、ティールが見るのは今のよう、思うさま顔を歪めた表情ばかり。
 影になったところでは、黒くさえ見える紺色の髪は艶やかで赤茶けた瞳は生気に満ちている。
 睨みつけるものではあれど、ティールに向かう視線はまっすぐでそらされることはなく、ギラギラとした輝きは眩しいほどだった。
 ぎゅっと噛みしめられていた少女の赤い唇がおもむろに開く。

「何度忠告すれば、貴方には伝わるのです? わたくしは何度も申し上げました。ユーファ殿下から距離をお取りになるようにと! その上、どうして生徒会役員でもない貴方が生徒会室に出入りなさってらっしゃるのか! そもそも、貴方はピオラ王女の護衛なのでしょう?! 何故ユーファ殿下のお隣にいらっしゃるの!」

 きつい調子で浴びせかけられた怒声は、これまで何度も彼女に言われてきた物と同じだった。
 彼女の言葉は、ティール自身納得できるものもあれば、まったく理解できないものもある。
 例えばピオラの護衛云々など、ティールとしてはユーファ殿下自身を見極める為という理由があるのだが、それはリアラクタ嬢にはわからないだろう部分である以上、なぜ、と疑問に思うのはなんらおかしなことではなかった。
 生徒会室の件についても、ティールが部外者であることは事実なのだ。指摘されるのは不自然ではない。
 ティールは基本的に彼女のことが理解できない。彼女の言葉そのものというよりは、何故、彼女がそんなことをティールに行ってくるのかという根本的なことの方が不思議で仕方なかった。
 一方で、こうしてリアラクタ嬢の発言を聞いていると、おそらくこの少女が元々非常に頭のいい、清廉な人物なのだろうことがわかる。
 時に理不尽なことを言ってくる反面、自身の感情に沿って言葉を作っている部分が少ないのである。
 ティールについて、目障りだとか、生意気だとか、わけのわからない糾弾をしてくるのではなく、それらを告げるにしても理由を用意しているようである所などがそうだった。
 だからこそ言われる言葉は毎回ほとんど同じなのだが。
 ついでに言うと、ティールの返事自体はほとんど聞いてなどくれない。人の言葉が聞けないタイプでもなかろうにと思うと余計に不思議だ。

「ともかく! いい加減になさってくださいませね!」

 今もリアラクタ嬢は一方的にティールを睨みつけ、いつも通りの言葉で詰り、なぜ、どうしてと言いながら、ティールからの返事など待たずにこの場を去ろうとしている。
 まるで嵐のようだった。
 せめて会話がしたいのだけれど……と、実はこれまで妹からぐらいしか、あれほどきつい言葉をかけられたことのないティールは彼女の後姿を見送りながら思うことしかできなかった。
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