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3・偽りの学園生活
3-24・少女の焦燥(リアラクタ視点)
しおりを挟むリアラクタは焦っていた。
否、何故上手く行かないのかがわからない。
自慢ではないけれど、自分の容姿が良いのは自覚していた。
加えてキゾワリ聖国、聖王の第十三王女という地位。
自国内では決して高いとは言えなかった立場だが、他国では違う。無下にされるはずがない。
なにせ王女なのだ。
特にここ、ファルエスタは小国で、街道の関係もあり、キゾワリに睨まれたらひとたまりもなかった。……――これまでは。
ナウラティス帝国。
近くにある大国だ。忌々しい邪教の国。
ホフィア教なんていう、偶像さえ崇拝しない宗教なんて、我が国の誇る厳格なるキゾワリ聖教とは比べるべくもない。
「きっとしまいにはキゾワリ聖神から罰が当たるんだから」
爪を噛みながらリアラクタは呟く。
その邪教の国が、この小国に手を差し伸べた。
それも、第一王女を差し出すというこれ以上ない強固な後ろ盾として。
おまけにポータルだなんて野蛮なものまで設置したという。なんてことだろうかとリアラクタは憤慨する。
必ずそれらを壊さなければならなかった。
少なくとも、その為にリアラクタはこの国へと来ている。
この国の王太子であるユーフォルプァを誘惑し、ナウラティスとの婚約を破談に導く。そしてすでに設置されているポータルを破壊する。
リアラクタの役割は大きくはその二つ。
本当は先にナウラティスからの使者をキゾワリ聖国内でどうにかできていれば、リアラクタがこの国へ来ることもなかった。
否、それに関してはいずれにせよ時間の問題だったろうか。
なにせ父親である聖王は、リアラクタを何処かの国の王族へは嫁がせるつもりであったようだから。
その為に手を出さなかったのだと言い聞かされて育てられている。
相手がユーフォルプァであったことは、リアラクタにとって僥倖だった。
ユーフォルプァは見目好く、性格も悪くないと聞いている。結婚相手として申し分ない。
自分の美貌をもってして、少しずつ距離を縮めていけば、きっと容易いことだろうと考えていた。
なのに、あんなに美しい青年が、ユーフォルプァの隣に侍っているなんて。計算外もいい所だ。
婚約者候補だとかいうナウラティスの王女も一応顔を確かめたが、大したことがなかった。あれなら十分にリアラクタの方が美しい。
だが、あの青年はダメだ。
あの美しさはリアラクタの持つそれとは別種のもの。悔しいことに足元にも及ばない。
その上、ユーフォルプァ自身が、婚約者候補である王女を放ってかの青年にご執心だと言うではないか。
魔力も大したことはなさそうだし、ただの護衛だという話なのにどうして。
理由はやはりあの美しさだろう。
何とかしてあの青年を何処かへやらなければ。
このままではリアラクタは、ターゲットであるユーフォルプァから嫌われていく一方だ。
リアラクタは考える。リアラクタの武器はこの美貌と、そして……――不断の努力によって培われた優秀さそのものなのだから。
どうも水浸しにした程度ではあの青年には響かなかったようだ。なら、今度は。
自分ならできる。
リアラクタは自分にそう言い聞かせ、気持ちを新たにした。
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