55 / 206
3・偽りの学園生活
*3-16・交わらない心
しおりを挟む触れられるのは、久しぶりだ。
約一月。たったそれだけ。でも、同時にそれほどに長い時間。
そもそも、ティアリィとミスティがこういう関係に至って以降、たとえ一月と言えど、触れ合わなかったことなんて、それこそ6年前。ティアリィが自分の気持ちに気付くきっかけとなった、数か月に及んでミスティが留守にしていた時ぐらいしかなく、5歳の時に出会ってからこちら、顔を合せなかったこと自体が、その時と今しか存在しなかった。
その上、当時は通信機越しとは言え、顔を合わせてはいたのだ。そういう意味では、顔さえ合わせなかったのは今回が初めてで。
だからだろうか。ミスティの手つきには容赦がなく、注がれた魔力と魔術はいつも以上の速さで、ティアリィから理性を根こそぎ奪っていった。
「あっ! あっ! あっ!」
上がる声を耐えることもなく、揺さぶられるのに合わせて高く喘ぐ。
ミスティはいつも使用している魔術に任せて、これでもかと過剰なほど、ティアリィに魔力を注ぎ続けた。
それこそ、瞬く間に暴いたティアリィの下肢、奥まったところにある慎ましやかな其処に、だいたい一月程、触れていなかった所為で閉じ切っていることになど微塵の考慮も見せず、魔術を行使してぐちゅん、僅かばかり探っただけで、堪えきれないとばかり、硬くそそり立つ自身を突き立てたほど。
「ぁあっ!」
仰け反りたわむ背を引き寄せ、更に腰を密着させて。
大きく開かせたすんなりと細いティアリィの片足は、ミスティの方へと担がれている。
もう片方にも腕を絡め、体ごと縫い留めていた。
ティアリィの尻は浮き、ミスティの腰の上。不安定な体を支えるのは、かろうじて床につかれたティアリィ自身の両手のみ。
ティアリィは背にした扉と覆いかぶさるミスティの体に挟まれる形で揺らされていて。
「あっ、あっ、あっ、」
躊躇ない腰使いで奥を抉られては、上擦った声があがり続ける。
頭は眩んで、ぼんやりとして、自分が今何をされているのかもよくわからなかった。
今のティアリィに分かるのは、自分に触れているのがミスティで、注がれている魔力がミスティのものだということ、ただそれだけ。
それ以外はもう、わからない。
「ティーア、ティーア、ティー、アっ……うっ」
どぷん。うわごとめいた声で名を呼ばれ続け、詰めた息と共に体の奥深くへと注がれたのはたかだか一月やそこら触れていなかった程度では到底忘れることなどできるはずのない、慣れ切ったミスティの魔力と体液で。
溶けそうだった。
触れ合った所から混じって、境目が分からなくなってしまいそうだ。
「みぃ、しゅぅぅ……」
身悶えて受け止める。
本当は求めていた。
ティアリィだって、ミスティと会えず触れ合えず、寂しさは感じていたのだ。でも。
これでもかと執拗に魔力を注がれて。充足感を覚えている。
頭は魔力によって、ぼんやりと霞んでもう何が何やらわからない。
それでも。
それでも、だ。
ティアリィはミスティからの奔流のような行為に晒されながら、酔いながら。こんなのは違うと、それだけを強く思い続けていた。
その証拠に。
「ティー、アっ……!」
ドクン、いくら腹の中に注がれても。
「あぁっ!」
いくら快感に仰け反っても。
ミスティの魔力はティアリィの中で凝らず、子には成らず。
何も変わっていない。
この6年とまるで同じ。
「ミーシュっ……!」
体の隅々にまで、ミスティの魔力が満ちていくのに。
「ティーアっ」
縋るように抱きしめられたって、ミスティの注ぐ魔力は少しも。形になることはなかったのである。
21
お気に入りに追加
815
あなたにおすすめの小説


巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
他サイトでも公開中
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿


【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

繋がれた絆はどこまでも
mahiro
BL
生存率の低いベイリー家。
そんな家に生まれたライトは、次期当主はお前であるのだと父親である国王は言った。
ただし、それは公表せず表では双子の弟であるメイソンが次期当主であるのだと公表するのだという。
当主交代となるそのとき、正式にライトが当主であるのだと公表するのだとか。
それまでは国を離れ、当主となるべく教育を受けてくるようにと指示をされ、国を出ることになったライト。
次期当主が発表される数週間前、ライトはお忍びで国を訪れ、屋敷を訪れた。
そこは昔と大きく異なり、明るく温かな空気が流れていた。
その事に疑問を抱きつつも中へ中へと突き進めば、メイソンと従者であるイザヤが突然抱き合ったのだ。
それを見たライトは、ある決意をし……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる