結婚10年目で今更旦那に惚れたので国出したら何故か他国の王太子に求婚された件。~星の夢2~

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
41 / 206
3・偽りの学園生活

3-2・王太子とピオラ

しおりを挟む

 結局、ティアリィのかけた変化の術は、旅で使用していたものと同じ。容貌自体は変化させず、髪と目の色を変え、魔力を抑えただけのそれとなった。
 何せ周囲に訊ねたら全員が全員、それで問題ないと言い切ったのだ。
 ピオラさえ、

「お母様はもともとお若くていらっしゃるから……確かに、そう言われて改めて見てみると、学生、と言われて不自然ではございませんわね」

 などと太鼓判を押し、アーディには呆れたような目で見られつつ、

「今更、何言ってるの? 母様、元々それぐらいにしか見えないよ」

 などと吐き捨てられ、グローディも隣でしきりに頷いていた。
 もしやまさか、てっきり年相応程度の見た目だとばかり思っていたけれど、自分の認識がおかしかったのか? と、ティアリィ自身さえ迷う始末。
 そんなに言うのならと開き直った結果だった。
 なお、そもそもティアリィは今回、あくまでもピオラの護衛として同行していて、国王夫妻や宰相、騎士団長などの上部の者はともかく、その下や末端の者たちは、ティアリィのことを護衛騎士であり、かつ、ピオラの叔父・・に当たる、ただの公爵子息だと認識している。
 それはユーフォルプァ王太子殿下も同じで、特に殿下には知らせないでおくこととなった。
 何故ならおそらくその方が、飾り気のないの人物の姿が見れるだろうからとの判断だ。
 つまり殿下はティアリィのことを、婚約者候補の護衛として他国から来た同じ年の少年・・・・・・だと思っているということだった。
 流石に国王夫妻が、護衛とは言え公爵家子息で、国賓でもあるとは告げてくれたようで、初めて会ったユーフォルプァ王太子殿下は人懐っこい笑顔で笑いかけてきて、

「わからないことがあれば何でも頼るといい」

 なんて、頼もしいことを言ってくれた。
 ユーフォルプァ王太子殿下は、国王夫妻の両方に似ていて、だが、同時に両方に似ていなかった。
 顔の造作そのものは王配殿下よりだろうか。男らしい美貌の持ち主で、まだ16になる所だというのに、すでにティアリィより頭半分ほどもでかい。体格もよく、体の厚みが全然違った。ミスティと同じか、それより少し劣るぐらいだろうか。年齢を考えると、もっと逞しくなるのかもしれない。
 髪と目の色はルディファラ王と同じ、金髪碧眼だ。色は流石にルディファラ王より少し濃い。とは言え、魔力量も王族としては充分な程度。
 何より違うのはその底抜けに明るく見える快活な表情と、彼自身を構成・・・・・・している魔力。
 確かに、核は王配殿下のものだろう。それは疑うべくもない。だが同時に彼自身を構成している魔力は主にルディファラ王のもので、更に様々な人物の魔力が混じり合っているように見えた。
 少なくとも、ルディファラ王は腹に彼を抱えていた間、王配殿下以外の数多くの人間の魔力も受けていたということだ。とは言え、それぞれから受けた魔力自体は少量のものだったことだろう。少なくとも接触は肌に触れた程度ではないかと思う。例えば手を握るだとか、そういうことだ。なにせ本当にたくさんの魔力が混ざっている。とにかく出来るだけ多くの人たちから魔力を与えてもらったのだとでもいうかのように。
 だからこそ、似ているのに似ていない存在となっていた。
 彼が出来た時の経緯を考えると、理解できなくもない話だった。
 むしろそうして生まれてきた割に、快活に過ぎる明るさの方こそおかしく見えるほど。
 もっとねじ曲がっていてもおかしくはない環境に育ったはずなのに、ユーフォルプァ王太子殿下は過ぎるほど真っ直ぐな人物のようだった。
 とにかくティアリィに親切なのである。
 勿論、ピオラに対する態度も丁寧で、礼儀正しく、同時にほんの少しの親しみも滲ませ、現状、ティアリィの目にマイナスとなる要素が見当たらないほど。
 反面、ピオラの態度は何処までも普通で、熱も何もない様子だったのだが、こちらはまだ実際に出会って間もないこともあるし、今はこんなものなのではないかとも思った。
 実際、ピオラに訊いてみても、

「明るい方ですわよね」

 と言うばかり。特別何か彼自身に、感じるものなどないらしい。
 ユーフォルプァ王太子殿下は充分な美丈夫だし、ピオラだって、ティアリィには似ていないとはいえ、可愛らしい見た目をしている。年の差も2歳とちょうどよく、お似合いに見えなくもなかったのだけれど。

「お母様。そんなに焦らずとも、そういったものはもっとゆっくり育むものですわ」

 などとピオラ本人に言われてしまえば、ティアリィにはもう、言えることなど何もなかった。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

侯爵令息セドリックの憂鬱な日

めちゅう
BL
 第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける——— ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

悪役令息の死ぬ前に

やぬい
BL
「あんたら全員最高の馬鹿だ」  ある日、高貴な血筋に生まれた公爵令息であるラインハルト・ニーチェ・デ・サヴォイアが突如として婚約者によって破棄されるという衝撃的な出来事が起こった。  彼が愛し、心から信じていた相手の裏切りに、しかもその新たな相手が自分の義弟だということに彼の心は深く傷ついた。  さらに冤罪をかけられたラインハルトは公爵家の自室に幽閉され、数日後、シーツで作った縄で首を吊っているのを発見された。  青年たちは、ラインハルトの遺体を抱きしめる男からその話を聞いた。その青年たちこそ、マークの元婚約者と義弟とその友人である。 「真実も分からないクセに分かった風になっているガキがいたからラインは死んだんだ」  男によって過去に戻された青年たちは「真実」を見つけられるのか。

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

そばかす糸目はのんびりしたい

楢山幕府
BL
由緒ある名家の末っ子として生まれたユージン。 母親が後妻で、眉目秀麗な直系の遺伝を受け継がなかったことから、一族からは空気として扱われていた。 ただ一人、溺愛してくる老いた父親を除いて。 ユージンは、のんびりするのが好きだった。 いつでも、のんびりしたいと思っている。 でも何故か忙しい。 ひとたび出張へ出れば、冒険者に囲まれる始末。 いつになったら、のんびりできるのか。もう開き直って、のんびりしていいのか。 果たして、そばかす糸目はのんびりできるのか。 懐かれ体質が好きな方向けです。今のところ主人公は、のんびり重視の恋愛未満です。 全17話、約6万文字。

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

処理中です...