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1・きっかけと要因
1-8・ピオラの縁談
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ところで、ミスティとティアリィの間には、養子を含め5人の子供がいる。
一番上がピオラという4歳の時に引き取った女の子で、次がグローディジェという名の7歳で引き取った男の子。3人目が実子として一人目のアーディ、4人目も実子でミーナ。最後がコルティと名付けられた生後数か月で引き取った女の子だった。
なお、年齢で言うとグローディジェ――グローディは2番目となるが、引き取った順になると最後だ。なにせその時の年齢が7歳。すでにコルティがいて、1歳になっていた。
引き取った経緯はそれぞれだが、皆一応は薄くとも王族の血は引いている。王位継承権に関してのみは流石に実際の血の濃さの影響を免れない状況となっているが、扱いに関しての差は付けていない。
特にティアリィにとっては5人とも、等しく愛しい我が子だった。
その中でも一番上のピオラに、他国より縁談の話が持ち込まれたのは、彼女がまだ9歳の時のこと。
ちょうど、グローディを引き取ってすぐの頃だった。
ピオラをと名指しがあったわけではないが、出来れば王女ないし王子の立場にある者を、との指定で相手の年齢がピオラの二つ上の11歳であったことと、あえて立場にある者という言い回しを使ってきたことも含め、案にピオラのことを指しているのは明白で。
それを知ったティアリィはしんなりと不快気に眉をひそめた。
申し出を送ってきた国はナウラティスから最低でも2つは国を跨がなければ辿り着けないファルエスタ王国という国で、国同士の移動を安易にする固定転移魔法のポータルの設置もされていない山に囲まれた小国。その上、13年前に大規模なクーデターが起こり、王族は2人を残して全員が斬殺されている。
だからこその申し出ではあったのだが、犯人はその時に国王に納まった当時王甥であった人物で、一度捕まりはしたのだが、今は王配となっている。
今の国王はもう一人の生き残りであり、件の犯人が捕らえられるまでの二年間、その者に監禁されていた当時の王太子だ。
ピオラの相手というのは彼ら二人の第一子にして当時、唯一の子供であった王子だった。
どう控えめに考えても、かわいい子供を行かせたい国でも環境でもない。
当然、ミスティにもティアリィにもそんな話を受けるつもりなんてなかった。
伝え聞く彼の国の状況には同情の余地がありはしたがそれだけ。一応、友好国ではあるものの、それほど国交が盛んな相手でもない。
そもそもナウラティスは大国で周りに比肩する国などなく、国内外合わせても政略的な婚姻が必要な状況など、どこにもありはせず。断ればそれで済んだ。
だが、一応と本人に伝えたところ、ピオラ本人が受けると言い出したのである。
ピオラは、生れの所為もあるのだろう、小さい時からおとなしい子供だった。
いつも控えめで気性も穏やかだ。勉強や魔術の習練などに関しても努力を怠らず、大人の言うことには素直に頷く。我がままひとつ言わない、時折心配になるほど聞き分けのいい良い子。
そんなピオラがその時ばかりは、はっきりと主張した。
自分が求められているのなら、ぜひその国に嫁ぎたいと。
多分に同情心が、その主張の理由の大半を占めていたとは思うが、相手の王子のことなど何もわからず、件の事件を知った上でそう言い張ったのである。
ミスティにもティアリィにも、本人の希望を一方的に退けることが出来なかった。
しかし流石に、婚約とほとんど確定となる状況までは許可できず、相手の国にはまだ二人とも幼いため、数年後に改めて本人たちの意向を確認し、その上でならと返事を返した。
つまり暫定的な婚約者候補となったのである。
それもあるのだろう。
4年後。ピオラが13歳になった時、一年後の14の年から、あちらの国の高等学校に当たる5年制の学園に留学してはどうかという話が舞い込んできたのだった。
一番上がピオラという4歳の時に引き取った女の子で、次がグローディジェという名の7歳で引き取った男の子。3人目が実子として一人目のアーディ、4人目も実子でミーナ。最後がコルティと名付けられた生後数か月で引き取った女の子だった。
なお、年齢で言うとグローディジェ――グローディは2番目となるが、引き取った順になると最後だ。なにせその時の年齢が7歳。すでにコルティがいて、1歳になっていた。
引き取った経緯はそれぞれだが、皆一応は薄くとも王族の血は引いている。王位継承権に関してのみは流石に実際の血の濃さの影響を免れない状況となっているが、扱いに関しての差は付けていない。
特にティアリィにとっては5人とも、等しく愛しい我が子だった。
その中でも一番上のピオラに、他国より縁談の話が持ち込まれたのは、彼女がまだ9歳の時のこと。
ちょうど、グローディを引き取ってすぐの頃だった。
ピオラをと名指しがあったわけではないが、出来れば王女ないし王子の立場にある者を、との指定で相手の年齢がピオラの二つ上の11歳であったことと、あえて立場にある者という言い回しを使ってきたことも含め、案にピオラのことを指しているのは明白で。
それを知ったティアリィはしんなりと不快気に眉をひそめた。
申し出を送ってきた国はナウラティスから最低でも2つは国を跨がなければ辿り着けないファルエスタ王国という国で、国同士の移動を安易にする固定転移魔法のポータルの設置もされていない山に囲まれた小国。その上、13年前に大規模なクーデターが起こり、王族は2人を残して全員が斬殺されている。
だからこその申し出ではあったのだが、犯人はその時に国王に納まった当時王甥であった人物で、一度捕まりはしたのだが、今は王配となっている。
今の国王はもう一人の生き残りであり、件の犯人が捕らえられるまでの二年間、その者に監禁されていた当時の王太子だ。
ピオラの相手というのは彼ら二人の第一子にして当時、唯一の子供であった王子だった。
どう控えめに考えても、かわいい子供を行かせたい国でも環境でもない。
当然、ミスティにもティアリィにもそんな話を受けるつもりなんてなかった。
伝え聞く彼の国の状況には同情の余地がありはしたがそれだけ。一応、友好国ではあるものの、それほど国交が盛んな相手でもない。
そもそもナウラティスは大国で周りに比肩する国などなく、国内外合わせても政略的な婚姻が必要な状況など、どこにもありはせず。断ればそれで済んだ。
だが、一応と本人に伝えたところ、ピオラ本人が受けると言い出したのである。
ピオラは、生れの所為もあるのだろう、小さい時からおとなしい子供だった。
いつも控えめで気性も穏やかだ。勉強や魔術の習練などに関しても努力を怠らず、大人の言うことには素直に頷く。我がままひとつ言わない、時折心配になるほど聞き分けのいい良い子。
そんなピオラがその時ばかりは、はっきりと主張した。
自分が求められているのなら、ぜひその国に嫁ぎたいと。
多分に同情心が、その主張の理由の大半を占めていたとは思うが、相手の王子のことなど何もわからず、件の事件を知った上でそう言い張ったのである。
ミスティにもティアリィにも、本人の希望を一方的に退けることが出来なかった。
しかし流石に、婚約とほとんど確定となる状況までは許可できず、相手の国にはまだ二人とも幼いため、数年後に改めて本人たちの意向を確認し、その上でならと返事を返した。
つまり暫定的な婚約者候補となったのである。
それもあるのだろう。
4年後。ピオラが13歳になった時、一年後の14の年から、あちらの国の高等学校に当たる5年制の学園に留学してはどうかという話が舞い込んできたのだった。
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