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1・きっかけと要因
*1-5・6年前の話。予想外の羞恥
しおりを挟むミスティの体は熱かった。
特に腰と尻の間ぐらいに昂った強張りを押し付けられて、気付いた途端、びくと体が震えた。
そこに宿る欲を、ティアリィは知っていた。身をもって、これまでにも幾度となく受け入れてきたそれ。それを、今、ミスティがティアリィに求めている。
「ぁっ……、う……ぅう……」
さっきは名前一つまともに呼べなかったティアリィを。そんなことにはまったく構わず、ミスティは今、こんなにも求めて。
胸に湧き上がったのは歓喜だった。緩みそうになる頬が、やはり恥ずかしい。
俯いたままの顔を上げられない。ミスティが見れない。
ぎゅっと、更に力を籠めて抱きしめられた。
熱い。熱いのはティアリィなのかミスティなのか。否、きっと二人共が同じよう、体に熱を灯しているのだろう。
ふわと、ティアリィに触れた所からミスティの魔力が伝わってくる。いつもティアリィを酔わせてくれるそれだ。それは最近では、多くは夜に寝台の上で仕掛けられるものだった。すなわち必然的に体を交わす行為の誘いかけのようなもの。
今までティアリィはそんな誘いを、状況が許す限りで拒んだことなどなかった。
五年近く前、ミスティの魔力を受け付けなくなったあの期間でさえ。
だが今は逃げたくて堪らない気持ちになっている。
このまま触れられることに、どうにもティアリィは耐えられそうになかった。
この熱いミスティの指に体を暴かれる。それこそ、奥の奥、腹の中まで。どうしてそんなものを、今まで平気で受けれていられたのだろう。
こんなにも恥ずかしくて居た堪れないのに、どうして。
わからない。わからないけど逃げたい。でももちろん、ミスティに逃がしてくれる様子など少しもなかった。
ティアリィ話すすべなく、体を竦めていることしかできなかった。
今、自分に触れないでほしい。否、もっと触れてほしい。相反する気持ちがせめぎ合う。
触れてほしい、という自分の願望には気付かないままで、でもミスティの腕を振り解けないということは、そういう意味に他ならなかった。
剰え自覚なく、ティアリィは微か、縋るよう、ミスティの服から手を離さずにいる。
自分の何気ない仕草が、如何にティアリィに欲を持つ生物を暴走させるものになるのかをちっとも理解せずに。
「ああ、ティアリィ」
感極まったようにミスティがティアリィの名を呟いて、やや乱暴な手つきで細い肢体を弄りだす。
「えっ?! ぁ、……ゃっ! ミスティ、ちょっ……、」
多分待ってと、言いたかったのだろう、ティアリィの控えめな静止は、当たり前にミスティには通じなかった。否、たとえ伝わっていたとしても、そんなものでミスティが止まれるはずがない。ますますミスティの指先が熱を持つだけ。
「ああ、ティアリィ、ティアリィ、ティーア」
ティーア。
うわごとのように何度も名を呼びながら、ミスティの手が慣れた仕草で器用にティアリィの服を乱していった。
指先から灯される熱があつくて、流し込まれる魔力にティアリィは酔っていく。頭の芯が痺れるようにしてぼやけた。この後の快感を知っている体がもっと更にと熱を上げる。いつの間にか下肢が張り詰めていることにも気づかずにティアリィは、小さく身じろぎながらほとんどミスティの為すがままとなっていた。
「うぅ……ぁっ!」
気まずげに小さく呻いて、だが、触れられる場所によっては、はっと息を詰めて体を震わせて。
とさ。いつの間に用意していたのか、否、初めからここにあるままだったのか。やはり白い毛布の上に、気付けばティアリィは押し倒されている。
天井の白が眩しくて、それを背にした、自分に覆いかぶさってくるミスティがキレイで。かっこよくて。熱を迸らせる、飢えた獣のような欲に塗れた紫色が、ただ真っ直ぐにティアリィを求めていることに知らず心地よさを感じてしまっていた。
肌を探られる。いつの間にか寛げられた下肢をかき分けて、昂り切ったティアリィ自身をきゅっと柔く握りこまれた。
「あっ……!」
快感が背筋を駆け抜ける。目が眩んだ。気持ちいい。
それは初めて感じるのではないかと思うぐらいの気持ちよさ。
こんな行為、この五年間で、それこそ数えきれないぐらいに重ねてきたのに。でも、今感じているのはそんなもの、比べ物にならないぐらいの衝撃だった。
「あ! ぁっ! ……ゃっ……あぁ!」
身を捩って快感を逃がそうとするができない。ミスティがそれを許してくれない。
さんざんティアリィ自身を弄んだミスティの指が、気が済んだのか、否、その先を急いだのか、次にティアリィの後ろを探る。
この数か月、開かれることのなかったはずの其処は、なのにまるで待ちわびるかのようにひくついて、喜んでミスティの指を迎え入れようとしていた。
意図しない体からの裏切りに、ついていけないままのティアリィを置き去りにして。
ああ。蕩けていく。
ティアリィは眩む思考に、すぐにも何かを考えることを放棄し始めたのだった。
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