【完結】見ず知らずのイケメンが突然「すみません、この子の親になって下さい」と言ってきたのだが、見た目が好みだったので引き受けることにした。

愛早さくら

文字の大きさ
上 下
2 / 10

*2

しおりを挟む

 俺は確かに頷いた。
 そりゃ、あまりに俺好みの男に見惚れてはいたけれど、別に操られていたわけでもなければ、自分がいったい何に対して頷いたのか、わかっていなかったわけではない。
 初めて見る赤ん坊。
 おそらくはその子のだろう親になって欲しいと言われて、俺が頷いたのは間違いがないのだ。
 だがしかし、だからと言って。

「ぁっ! ぁっ、ぁあっ! やぁっ! ぁあっ!」

 この状況はないと思う。
 俺は今、先程あったばかりの男の雄を腹の奥深くまで埋め込まれ、男が腰を振るのに合わせ体を揺さぶられていた。

「ぁっ、ぁっ、ぁあっ……!」

 切羽詰まった鼻にかかった声。
 我ながらなんて声を出しているのかと思わないでもないが、そこに苦痛などはない。

「ぅっ……ふ、ぅうっ……」

 呼吸を荒くしながら俺に覆いかぶさっている男が息をつめ、低く呻いた。
 男が達したのだろう、途端じわり、腹の中に広がった濃い魔力の気配。

「ぁっ……ぁあっ……」

 俺は陶然と何とも言えない声を出した。
 だって気持ちいい、気持ちいいのだ。自分とは違う熱。
 もう幾度目か。先程から数度注がれている男の魔力は、あの後すぐさま促された子供への授乳・・によって、少しばかり枯渇気味となっていた俺の魔力を補って余りあるほど濃く潤沢で。男がどれだけあの赤ん坊を思っているのかが伝わってでも来るかのようだった。
 自分ではダメなのだと言って俺に縋った。
 わかっている。
 親になる、そんな突然の男からの願いに頷いたのは俺だ。
 だから俺の魔力が足りなくなるだろうことは初めからわかっていて、ならばそれに付随するこう言った行為も、織り込み済みと言えば織り込み済みではあった。織り込み済みでは、あったのだが。

「ぁあっ……堪らない……すみません、また……ぅっ……」
「あっ! ぁあっ! ひぃっ……!」

 しばし微か腰を振るのみで余韻にでも浸っているのかと思えた男が、俺の思考を妨げるかのようにまたゆるゆると腰を動かし始める。
 その度に信じられないような腹の奥の奥を突かれ、俺は、

「あっ、あっ、あっ、ぁあっ!」

 そうしてまた、喘ぐことしか出来なくなっていく。
 ああ、本当に。
 わかっていた。
 わかっては、いた、けれども、それでも。

「ぁっ、ぁあっ!」

 さっきの今なのだ。これは流石に性急すぎるというものだろう、そう思わずにはいられないのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

完結·助けた犬は騎士団長でした

BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。 ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。 しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。 強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ…… ※完結まで毎日投稿します

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜

若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。 妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。 ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。 しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。 父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。 父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。 ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。 野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて… そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。 童話の「美女と野獣」パロのBLです

処理中です...