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しおりを挟む俺は確かに頷いた。
そりゃ、あまりに俺好みの男に見惚れてはいたけれど、別に操られていたわけでもなければ、自分がいったい何に対して頷いたのか、わかっていなかったわけではない。
初めて見る赤ん坊。
おそらくはその子のだろう親になって欲しいと言われて、俺が頷いたのは間違いがないのだ。
だがしかし、だからと言って。
「ぁっ! ぁっ、ぁあっ! やぁっ! ぁあっ!」
この状況はないと思う。
俺は今、先程あったばかりの男の雄を腹の奥深くまで埋め込まれ、男が腰を振るのに合わせ体を揺さぶられていた。
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ……!」
切羽詰まった鼻にかかった声。
我ながらなんて声を出しているのかと思わないでもないが、そこに苦痛などはない。
「ぅっ……ふ、ぅうっ……」
呼吸を荒くしながら俺に覆いかぶさっている男が息をつめ、低く呻いた。
男が達したのだろう、途端じわり、腹の中に広がった濃い魔力の気配。
「ぁっ……ぁあっ……」
俺は陶然と何とも言えない声を出した。
だって気持ちいい、気持ちいいのだ。自分とは違う熱。
もう幾度目か。先程から数度注がれている男の魔力は、あの後すぐさま促された子供への授乳によって、少しばかり枯渇気味となっていた俺の魔力を補って余りあるほど濃く潤沢で。男がどれだけあの赤ん坊を思っているのかが伝わってでも来るかのようだった。
自分ではダメなのだと言って俺に縋った。
わかっている。
親になる、そんな突然の男からの願いに頷いたのは俺だ。
だから俺の魔力が足りなくなるだろうことは初めからわかっていて、ならばそれに付随するこう言った行為も、織り込み済みと言えば織り込み済みではあった。織り込み済みでは、あったのだが。
「ぁあっ……堪らない……すみません、また……ぅっ……」
「あっ! ぁあっ! ひぃっ……!」
しばし微か腰を振るのみで余韻にでも浸っているのかと思えた男が、俺の思考を妨げるかのようにまたゆるゆると腰を動かし始める。
その度に信じられないような腹の奥の奥を突かれ、俺は、
「あっ、あっ、あっ、ぁあっ!」
そうしてまた、喘ぐことしか出来なくなっていく。
ああ、本当に。
わかっていた。
わかっては、いた、けれども、それでも。
「ぁっ、ぁあっ!」
さっきの今なのだ。これは流石に性急すぎるというものだろう、そう思わずにはいられないのだった。
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