7 / 26
6・だからと言って変われない
しおりを挟むそれから、キューミオ殿下は何を思われたのか、それとも単純にお立場からお考えになられたのか、ルーミス殿下と多くの時間を過ごされるようになっていった。
決してルーミス殿下の方から近づいていっているわけでも、共にいて楽しそうになさっておられるわけでもないが、キューミオ殿下ご自身が、折に触れルーミス殿下に近づいていかれるのである。
話が盛り上がっている様子もなければ、ルーミス殿下が無表情で無口であることに変わりはない。
だが、キューミオ殿下はそう言ったことを、何も気にしておられないようだった。
おそらくはルーミス殿下はそういう方なのだと、判断されたということなのだろう。
そしてそうなると、自然、私との関りも多くなってしまう。
私も、仮にも婚約者として過不足ない時間を、ルーミス殿下と共に過ごしているからだった。
そしてキューミオ殿下はそんな私が気に入らないのか何なのか、
「なんだ、またお前付きまとっているのか。いくら婚約者だからって言っても、お前みたいな能面が常に近くにいたら息が詰まるじゃないか。ちったぁ気を使えないのか? ったく。可愛げもなけりゃ気遣いも出来ないとは」
などと呆れかえったようなお声をかけてくることしばしばで、そういった時にはルーミス殿下は、言葉もなくさっさと遠ざかっていくことが多かった。
「あ、おい、ちょっ……待てよ!」
などと、そうしたら、キューミオ殿下が、私が追いかける前に追いかけていかれ、私が置いて行かれる結果となった。
欠片も振り返ったりなさらないルーミス殿下がいったい何を思っておられたのか、何故遠ざかって行かれるのかなどは全くわからず、私はただ、キューミオ殿下曰くの能面のような、あくまでもいつも通りの微笑みを湛えた顔でポツリ、立ち尽くすのみ。
「ああ、ラーファ様……! なんてお痛ましいっ……!」
「本当に。相変わらず無礼な方」
「気になさることはございませんわ。淑女として感情を表情に表さないなど、当然のことなのですから」
「キューミオ殿下こそが貴公子らしくないだけですもの」
そんな風に周囲にいた方々に慰められることまでもがいつも通りの光景で。
私はただ、常よりも笑みを深め、
「ありがとうございます」
そう静かにお礼を口にするばかりだった。
ただ、それでもどうしても、考えるようにはなってしまう。
『可愛げがない』
『能面のよう』
『気遣いが出来ない』
などと、幾度となくキューミオ殿下から掛けられるお言葉を。
かと言ってまさかルーミス殿下が言っておられるのならともかく、キューミオ殿下の言う通りに変わることなんて出来なくて。
(だって今まで受けてきた教育を、覆すようなことばかりなのですもの)
次期王太子妃として、そのようなことが出来るわけがなかったのだ。
そうして、ルーミス殿下とも少しばかり過ごす時間を減らしながら、日々はゆっくりと過ぎていった。
6
あなたにおすすめの小説
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
悪魔が泣いて逃げ出すほど不幸な私ですが、孤独な公爵様の花嫁になりました
ぜんだ 夕里
恋愛
「伴侶の記憶を食べる悪魔」に取り憑かれた公爵の元に嫁いできた男爵令嬢ビータ。婚約者は皆、記憶を奪われ逃げ出すという噂だが、彼女は平然としていた。なぜなら悪魔が彼女の記憶を食べようとした途端「まずい!ドブの味がする!」と逃げ出したから。
壮絶な過去を持つ令嬢と孤独な公爵の、少し変わった結婚生活が始まる。
戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました
Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。
「彼から恋文をもらっていますの」。
二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに?
真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。
そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。
※小説家になろう様にも投稿しています
【番外編も完結】で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★2/17 番外編を投稿することになりました。→完結しました!
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
初恋をこじらせたやさぐれメイドは、振られたはずの騎士さまに求婚されました。
石河 翠
恋愛
騎士団の寮でメイドとして働いている主人公。彼女にちょっかいをかけてくる騎士がいるものの、彼女は彼をあっさりといなしていた。それというのも、彼女は5年前に彼に振られてしまっていたからだ。ところが、彼女を振ったはずの騎士から突然求婚されてしまう。しかも彼は、「振ったつもりはなかった」のだと言い始めて……。
色気たっぷりのイケメンのくせに、大事な部分がポンコツなダメンズ騎士と、初恋をこじらせたあげくやさぐれてしまったメイドの恋物語。
*この作品のヒーローはダメンズ、ヒロインはダメンズ好きです。苦手な方はご注意ください
この作品は、小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる