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11・与えられない祝福
しおりを挟むそれ以来、私に触れるのは、ほとんどそのお一人の騎士様のみとなった。
勿論、そうなって以降も時折、他の騎士様や司祭様、父上から祝福を与えられることはあった。
それでもほとんどはそのお一人の騎士様だけ。
騎士様が可能な限り、朝も昼も夜も祝福を注がれることに変わりはない。
ただ、注がれている祝福は本当に祝福なのだろうかと私は次第にわからなくなっていく。
だってどうやらその騎士様は、ひどく大切なものに触れるかのように私に触れているのである。
「坊ちゃん、坊ちゃん、すみません、坊ちゃん。でも……うっ」
腰を振って、私の腹を穿って、奥深くに祝福を注いでくださる、否、これは本当に祝福なのか。わからなかった。
何故なら祝福とは気持ち悪く悍ましく、吐き気を催す物のはずなのだ。
にもかかわらず、この騎士様がお与え下さる色々の多くにはそれらは含まれず、私は非常に不安に駆られた。
「騎士、様、祝福を……どうして下さらないのです、騎士様……」
だから私は騎士様に訴えた。
私のお腹の中へと騎士様の雄身は差し込まれている。だが、事前にじっくりと時間をかけて触れられたせいか、この騎士様にそうされる時に限ってはほとんど痛みを感じず、剰え気持ちよくさえ感じられる時があって、私はわけがわからなかった。
騎士様は私の強張る体を、優しくなでて、抱きしめ、
「大丈夫、大丈夫ですよ」
そんな風な言葉をかけ、根気強く解して下さることもあって、私はひどく混乱した。
そうしてその先にこのように雄身を差し込まれ、腹を穿たれ、奥深くに魔力を注いで頂いても、そんなものほとんど祝福になり得ない。
だって私は気持ちよくさえ感じていて、騎士様の腕に安心さえしているのだ。
可笑しいとしか思えなかった。
わけがわからなくて不安だった。
だけど、訴える私に騎士様は泣きそうな顔をして、
「いい、ん、です……これでいいんです、坊ちゃん。魔力はちゃんと注がれているでしょう? だからこれで……坊ちゃん」
震える声で私を宥め、あたたかく包み込んできた。
それらは決して祝福ではなかった。
わからない。
祝福を、私は与えて頂かなければならないのに、どうすればいいのか。
この騎士様は、私に祝福を与えては下さらないのだ。
ミオシディアと同じ。
だけど、魔力は注いで頂ける。
騎士様が疲れて、たくさん魔力を注いで頂けない時は、他の騎士様や司祭様が来て、足りない分を補って下さったりした。
その時の痛みと苦しみと悍ましさと気持ち悪さは、騎士様にのみ魔力を注がれるようになる前に感じていたものの比ではないほど超大で、なるほど、より大きな祝福の為にそうしていたのかとも思ったりする。
ただ、そうして他の騎士様や司祭様に祝福を頂いた後のその騎士様は、私に縋って泣くばかりで、
「すみません、坊ちゃん、俺が……っ、すみません……」
そんな風に謝られても、何故謝っているのか私にはわからず。ただ、この騎士様は本当に私に祝福をお与えになっては下さらないのだなと思うばかりだった。
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