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3・特別な寵愛
しおりを挟む父上が私に直接に祝福を注いでくださる機会は決して多くはなかった。
精々が月に1度あるかないか。なにせ父上は忙しく、私にばかり時間を割いて下さるわけではないのである。
それ以外の時に私に祝福を下さるのは騎士様や司祭様だった。
母と私と。2人ともにまとめて祝福を注がれる。ただ、子供を身ごもっているか、さもなければ授乳期間でより多くの魔力を必要とする母とは違い、私は子供を身ごもってはおらず、授乳が必要な子供も産んだことがなかった。
父上からの祝福により宿る子供はすなわち神の一部である。
なぜなら、父上がこそ、神に等しくあらせられるからだ。
父上は仰られた。
「ルピル。成人したらココに私の一部を授けてあげよう。それまでは出来るだけ多くの祝福を留めておきなさい。子を成すには魔力は多ければ多い程よいのだから」
ココ、と指しながら、組み敷いた私の下腹部を撫で擦る、気持ち悪い父上の手指。祝福である。
だってこれ程におぞましくて嫌悪を伴うのだから間違いない。
「ぁ、ぁ、ぁあ……」
腹の中を掻き回されながら話されて、なるほど、この行為の先に、この身が父上の一部を宿すことが出来るのは成人してからなのだと理解した。
どこかでほっと安堵した自分が不思議だった。どうやらまだ少し猶予があるようだと私は思ったのである。ならばまだしばらくは母のようにはなるまいと。
しかし、それまでは注いで頂いた祝福を留めるようにとも言われているので余り変わらないのかもしれない。
事実、母よりは控えめではあれど、私もほぼ毎日祝福を注いで頂くこととなっている。
そうしてようやく、母が呻き声や悲鳴ばかり上げている理由を私は痛感した。
父上も騎士様も司祭様も、私や母に溢れんばかりの祝福を下さるのである。
祝福には痛みと苦しみとおぞましさと気持ち悪さが伴う。
私はとうに、より痛く、苦しく、おぞましく気持ち悪いほどに、頂いている祝福が多大であると理解している。
だからきっと、父上も騎士様も司祭様も、私や母の体を気遣ったりはなさらないのだろう。
より祝福が多大であるようにと。
父上も騎士様も司祭様も、私や母の肌を揉んだり舐めたり摩ったりなさる割に、雄の象徴を受け入れ、祝福を注がれるその場所にはさほど執拗に触れたりなさることがなく、それよりはといつも性急に雄の象徴を押し込めてくださった。
より多く祝福を注いでくださる為なのだろう。
固く逞しい象徴を力強く押し込まれた腹はいつも耐え難い痛みをもたらし、私もまた母のように悲鳴をあげてしまう。
「ぁああっ!」
雄の象徴を受けいれたその場所は頻繁に切れ、血を流した。
痛くて、気持ち悪くておぞましくて、硬く体は強ばり、私は知らず象徴をぎゅっと締め付け、そうすると更に痛みは増した。
だが、途端に祝福を注がれることもあり、つまりこうした反応を返すことは間違ってはいないのだと学んでいく。
「くそっ、締めすぎだぞ、おい、ちょっとは緩めろよっ、動きにくい」
「がっ、あっ、あっ、」
罵倒を浴びせられるが行為が中断されることなどはなく、私の腹はめちゃくちゃに擦られ、しばらくするとまた、祝福を注いで頂くことが出来た。
私はやはり母のように呻き声しか上げられず、しかし努めて喜びを持って祝福を受け入れるよう心がけた。
痛くて苦しくておぞましくて気持ち悪くて吐き気がした。
体はいつも強ばり、腹には常に違和感が付き纏う。
もっとも、私は魔法や魔術が苦手ではなく、治癒魔術が使えたので、父上に傷はそれで治すよう言われていて、祝福を注いで頂いた後はいつも自分で自分を治していた。
にも関わらず、違和感ばかりはなくならずこうして違和感を抱えることもまた、祝福の一部であるのだと理解する。
私は日々たくさんの祝福を与えて頂き続けたのである。
それらはきっと父上が、私を特別に気にかけ、可愛がってくださっているからなのだった。
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