47 / 55
第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
29・塔の外にて⑩
しおりを挟む僕は小さい。
もう18になるというのにあまり大きくは育たなかった。
言ってしまえばとても小柄だ。
ルナス様と比べると、自分の小ささが身に染みた。
ルナス様だって、決して大柄なわけではないようなのだけれども。
だからこうして、膝の上に抱え上げられると、僕はルナス様の腕の中にすっぽりと納まりきってしまう。
僕にとってはそれが心地よくて堪らなかった。
ああ、ルナス様は本当にかっこいい。
肌の熱さも素敵だし、僕を支えて下さる腕の、なんて力強いことだろうか。
本当に全くヤバすぎる。言葉にならない。
そして優しく慈悲深い。
僕をこんなにも大切にしてくださる。
そう、ルナス様のことを話すと、ユセアナはいつも何だかもの言いたげな顔をするばかりなのだけれど、いったいどんな反論があるというのか、僕にはいつだってわからずに。
ああ、ルナス様、ルナス様。
なんて素敵なんだろう。
どれぐらいそうして、うっとりとルナス様に身を預けきっていたことだろうか。
ルナス様が小さく身じろぐ気配を感じて、僕はそっと顔を上げた。
視界に入ってきたルナス様は、僕のことを見ていては下さらなかった。
だけど僕を抱える腕は力強いままだ。
「ルナス、様……?」
小さく呼びかけると途端、ルナス様が緊張なさったのが伝わってくる。
いったいどうしたというのだろう。僕は小さく首を傾げた。
そんな僕にルナス様がなぜか、うぐっと息を詰める。
いったい何があったのか。
何か思い悩むことでもおありになるのだろうか。
ああ、なるほど、だから少しばかり、塔にも来られなかったのか。
なら、それを、いくら限界だったからと言って押しかけたりなんかして。とても申し訳ないことをしてしまったのではないだろうか。
思って、僕は罪悪感にますます泣けてきてしまった。
ぐずぐず、泣き声が激しくなったのがわかったのだろう、ルナス様がおろおろなさっている。
ますます申し訳ない。だけど止まらない。
「ああ、リュディ……俺はどうすればっ……くそっ」
ルナス様はそんな風に、小さく吐き捨てたかというと、ぎゅっと僕を抱きしめてくれた。
「どうしたの、どうして泣いているんだ、俺が触れているから? 触れて欲しくない? ごめんよ、ごめん……でも、」
ルナス様がそこまで言って息を詰める。
僕はわけがわからない。
僕が泣いている理由。
ルナス様が触れているから。それは確かにあった。
でも触れて欲しくない、なんてそんなことあるはずがない。
それどころか足りない。そう思うぐらいなのに。
ルナス様はどうしてそんなことをおっしゃるの?
僕にはわからなかった。
0
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる