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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
19・侍女の誤認識と、愛しい彼を想うこと⑧
しおりを挟むルナス様との間に出来た二人目の子供はまだ生まれておらず、それどころか産み月も段々近づいてきているので、お腹も膨らみ始めている。
なのにルナス様はいらっしゃらない。
これからは今まで以上に魔力が必要となる時期なのに。
初めは気付かなかった。
これまでもルナス様は毎晩欠かさずいらしていたというわけではなく、時折来ない日もおありになったから。
ただし、それは物凄く稀ではあったけれど。
けれど、2日続けて来ない、なんてことはなく、それが3日、4日と経つと、流石の僕も不安を覚え始めざるを得なかった。
なにせこれまでほとんど毎日のように注がれていたルナス様の魔力が、ルナス様がいらっしゃらないということは当然、注いで頂けないということなのだ。
今はまだ何も問題は現れていない。
だけど数日のうちにきっと、魔力が足りなくなるだろうと予測できた。
なにせ、お腹の子供を育てる為には、ルナス様の魔力も必要なのだから。
ルナス様のことを思い出す。
最近少し様子が変わっていたルナス様を。
ユセアナがよくない事を言っていた。
でも。
「くそっ……! リュディ、君はどうしてっ、なぜ……何故、俺じゃないんだ、リュディ」
リュディ。
そんな風、わけのわからないことを言うようになっていたルナス様を。
ルナス様の言葉を、僕はだいたい全部覚えているんだけれども、でも言葉の意味を、しっかりと理解できているとは言い難い。
そもそも、夜にたくさん触れて頂く時の話ともなると、僕は痛みとか苦しさとか、もしくはわけのわからない快感、のようなものでまともに何も認識できなくなることがしばしばで。
ルナス様が何かを話している、というのはわかっても、それが何なのかが判断できないことがままあった。
それでも、わかる時の言葉はちゃんとたくさん覚えているのだけれど。
そんな中で、夜に、僕のお腹の中をぐちゃぐちゃにしながらルナス様のおっしゃっていらしたことは特に意味不明で。でも、そんな時のルナス様は少しだけ苦しそうに見えるので、そういえば僕はそれが、少しだけ気になっていたのである。
だって苦しそうなルナス様もかっこいいんだもの。
新しいルナス様のお顔にドキドキしちゃう。
そんな風に思い出してはうっとりしながらも、ただ変化は確かであり、実際にここにルナス様がいらしていないのも間違いない。
そしてこのままではそれはよくないということも。とは言え、だからと言って僕に何か出来るはずもなく。
「ねぇ、ユセアナぁ、どうしたらいいんだろ……」
ぐずぐずと泣きながら途方に暮れる僕に、ユセアナはやっぱり大きく深く溜め息を吐いたのだった。
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