34 / 55
第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
16・侍女の誤認識と、愛しい彼を想うこと⑤
しおりを挟む花は日増しに増えていく。
その全てを、僕は丁寧に保存した。
一輪ずつ。
それも決して毎日というわけではない。
なにせ他の小物の時もあったし、贈り物自体がない日もあった。
だけど数ヶ月も経つ頃には用意した花瓶はいっぱいになったし、塔へ入って階段を昇って、扉を開けてすぐにある、居間のようにして使っている一室はもとより、他の部屋にまで花があふれた。
ここへ来た当時の様子が、随分と寂しかったようだと思うほどだ。
寝室にも飾ってあるし、壁のそこ彼処にも花。
僕はルナス様が下さるものを全部、頂いた時のままの状態で保存魔法をかけておいたので、どれだけ時間が経ったって、早々枯れることもない。
ただし、いい加減増えすぎてきた物に関してはユセアナが流石に眉を顰めるようになってきていて。
とは言え、僕の気持ちを知っているユセアナは、それらを捨てろなんてことは決して僕に向かっては言わなかった。
だってルナス様が下さったものなのだ。
どうして捨てることなんて出来るというのだろう。
たとえこの塔の中が花でいっぱいに埋まっていったとしても、僕はどれ一つだって手放したりしないことだろう。
勿論、何か対策を考えなければとは思っているけれども、幸いにしてと言えばいいのか、階下には使っていない部屋もあると聞いているので、最終的にはきっとそこが花でいっぱいになっていくのだと思う。
つまり僕の宝物部屋になるということだ。
今はまだそこまでではないけれども。
ルナス様は何か月経っても、そのうち僕が子供を産んでも、いつだって優しくてかっこいい。
子供もルナス様ご本人が取り上げて下さって、僕はやっぱり感動して泣いてしまった。
正真正銘、僕とルナス様の子供。
僕とルナス様のみの魔力で構成されている存在。
それが嬉しくて仕方がない。
ああ、なんて愛しくて可愛いんだろう!
生まれた子供は勿論、ルナス様の次に大切な存在となった。
申し訳ないけれども、ルナス様が絶対的に一番なんだ。勿論、比べるようなものではないのだけれども。
僕は相変わらずいつも泣くばかり。
特にルナス様を前にするとダメだった。
ユセアナと二人、否、子供も合わせて三人の時にはそうでもなくても、ルナス様を思うだけでどれだけだって泣いてしまう。
ああ、だって。
「かっこいいんだよぉ~~! ヤバすぎる……」
どれだけ時間が経ったって、同じ熱量でうっとりするばかりの僕にユセアナははっきりあきれ顔。
だけど僕はわかっている。
ユセアナはそうして呆れているけれども、ちゃんと何度もルナス様に、僕の気持ちを伝えてくれているってことを。泣くばかりで、まともに話し一つできない僕に変わって。
10
お気に入りに追加
156
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。
桜月夜
BL
前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。
思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。


【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

完結·助けた犬は騎士団長でした
禅
BL
母を亡くしたクレムは王都を見下ろす丘の森に一人で暮らしていた。
ある日、森の中で傷を負った犬を見つけて介抱する。犬との生活は穏やかで温かく、クレムの孤独を癒していった。
しかし、犬は突然いなくなり、ふたたび孤独な日々に寂しさを覚えていると、城から迎えが現れた。
強引に連れて行かれた王城でクレムの出生の秘密が明かされ……
※完結まで毎日投稿します
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる