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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
15・侍女の誤認識と、愛しい彼を想うこと④
しおりを挟むルナス様は本当にお優しい。
多分きっと、塔に閉じこもる僕をかわいそうに思って下さったのだろう。
ある時からルナス様は、小さな贈り物を僕に持って来て下さるようになった。
それは本当に些細なもので、キレイな花一輪から、日常使いできるような小物など、多岐に渡った。
その中でも一番多かったのは花だろうか。
一番初めに送られ花は、特に印象に残っている。
きっと、執務室だとかに飾られていた花を一輪、抜き取ってきてくださったのだろう。キレイに処理された青紫色の花。
だけどとても色鮮やかなそれ。
僕の瞳の色とも少しだけ似ていた。
塔の中の内装は、とても淡い色味に満ちていた。
白だとかクリーム色だとかが多かったのだ。
それはおそらく、閉じこもってはいても、気分まで落ち込まないようにと明るい色で揃えてくれていたのだとそう思う。ルナス様の気遣いだ。
だけど少しばかり色味に乏しかったのも本当で、僕は何にも気にしたことなんてなかったのだけれど、頂いた花一輪であったとしても、他にはない鮮やかさは、パッと、塔の中全体を華やかに彩るかのようだったのだ。
花を一輪。
ルナス様から差し出された僕は、ようやく辛うじて受け取りながらもはやりいつも通り泣いてしまって。ルナス様はやっぱり戸惑われるばかりだった。
嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて。本当にルナス様はカッコよくて優しい。僕をこんなにも好きにさせていったいどうするつもりなんだろう。
僕の中にはもう全部ルナス様しかない。
「ああ……かっこいい……」
うっとりと、頂いた花に保存魔法をかけて、枯れたり萎れたりしないように手元において、見つめながら呟く僕に、ユセアナはあきれ顔。
その頃になると流石に段々と、僕も夜のあのルナス様に触れて頂く行為にようやく慣れてき始めたのか……――本当のことを言うとただ単に、翌朝かける治癒魔術の加減を覚えてきて、全く全てを真っ新に治してしまうのではなく、ある程度は感覚を残した方がいいとわかってきていたので、体を馴染ませられるようになって来たというか、そういう理由で毎晩のように血を流すなんてことはなくなってきていたので、ユセアナの憎まれ口のようなものも控えめになってきていて。
僕はユセアナの口からルナス様を責めるような言葉が出て来ないだけでも、少しばかり嬉しく思っていた。
それでも、僕の言動に溜め息を吐くのは変わらない。
いつものことだから僕だって気にしない。
それより大事なのはルナス様。
かっこよくて優しくて、本当に素敵なのだ。
だから僕は日々、ルナス様への思いを募らせるばかりだった。
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