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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)
6・世界は輝いている⑥
しおりを挟むユセアナはいつも口うるさいのだ。
ちなみに僕はだからと言ってユセアナのことを疎ましく思っているわけではない。
なら何なのかというと、こんなのただの戯れのようなもの。
「いいじゃない、ここにはユセアナしかいないし、僕の言葉なんてどうせ君しか聞いてないよ?」
首を傾げるとまた溜め息。
「普段から直しておかないと、いざという時もその口調が出てしまいますよ。それはよろしくございませんでしょうに」
「えー、だってぇ」
「だってじゃありません! 全く、わけのわからない本からばかり影響を受けて……」
「それこそしょうがなくない? 僕の周りにはそんなのしかなかったし。何より面白かったしね!」
そうなのだ。僕のあまりよろしくない口調は概ね大衆小説から受けた影響なのである。
なんと言えばいいのか、言語が崩壊してそうな暗号のような小説は大変に面白く、僕はそういう小説が他の何より大好きで。
おかげで僕の口からこぼれ出る言葉は少しばかり品性にかけている。
もっとも、自覚はあるので普段はあまり口を開かないようにしているのだけれども。
それにそもそもユセアナの言うことはもっともなことばかりだ。僕は諸々全部を分かった上でユセアナとやり取りしていて、これも言わばただのコミュニケーション。ユセアナも同じよう、理解した上で付き合ってくれているに過ぎなかった。
ま、僕の口調がよろしくないのは、実際に単なる事実ではあるのだけれど。
僕に直すつもりがない時点で、言っても無駄だってことを、ユセアナはわかっているのである。
そもそも物心ついた頃にはすでに軟禁されていたと言って過言ではない僕だ。人とかかわったことそのものの経験があまりなく、正しい言葉遣いも何もなかった。
一応、教えられはしたのだけれど、実戦経験が乏しければ身になどつかない。
僕が持っているのは知識だけ。
そして教えられた知識より、本から得た知識の方が多いのだ。結果はお察しというものだろう。
ユセアナはいい加減僕の相手も疲れたのか、否、単純に忙しいだけだろう。返事が途切れたので僕はなんとなく荷解きするユセアナの背中を見続けた。
荷物はそんなに多くない。
衣装とかの整理は徐々にやっていくって言ってたし、急ぐのは当面の身の回りの品ぐらい。
僕の大好きな書物たちは、下の階に書庫を用意してくれているのだそうだ。
至れり尽くせりとはこのことだなぁと僕は思う。
それもこれも全部、ルナス様のお優しさ故なのだろう。
全く! どれだけ僕を惚れさせれば気が済むのだか!
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