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第2章・まるで夢のような日々(リュディ視点)

1・世界は輝いている①

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 僕が陛下……――ルナス様と初めて出会ったのは、僕がまだ3つの時だった。
 そのとき何がどうしてどういう状況だったのかだとか、そんなことは全く覚えていない。
 何せ僕は当時まだたったの三歳だったので。
 ただ、どうやらその時、僕は両親に連れられて、隣国シュネリニア王国の建国際に訪れていたらしい。
 それで僕は勿論式典には参加しないので、母と共に王宮の中庭を見学していたのだとかなんだとか。
 そういった状況については、後から聞いた話だ。
 とにかく僕はその時、ルナス様と初めてお会いしたのだ。
 初めてお会いしたルナス様は……控えめに言って、物凄くかっこよかった。
 それはもう、感極まって泣いてしまうぐらいに。

「今思い出しても素敵すぎる……ああ、ルナス様っ!」

 語尾にハートマークでもつけそうな勢いで泣きながら叫ぶ僕を、僕付きの侍女であるユセアナは慣れた様子ですげなくあしらった。

「はいはい、わかりました。もう何度もお聞きしていますからとっとと食事を済ませてしまって下さい」
「あ、ごめん、手が止まってたね」

 食事中である。
 シュネリニアの王宮の敷地内にある塔の上。僕はいつも通り、ユセアナが用意した昼食を摂っていた。
 ここでの食事は基本的に自炊となっている。
 それというのも、王宮が用意したものに万が一にでも毒物が仕込まれていたらと、そう警戒してのこと。
 王宮内にまで、僕のことをよく思わない人がいるのだそうだ。
 食材には流石にそう言ったものは仕込みにくい。
 もっとも、僕もユセアナも解毒というか浄化というか、毒物除去と言えばいいのか、毒性物質の組成変化と言えばいいのか、そういったことが出来るので、本当はそこまで警戒する必要もないのだけれど、シュネリニア側の好意・・なので素直に従っている。
 対外的な目というものもあるのだろう。
 料理なんて言う手間をユセアナにかけてしまっているのは申し訳なく思うけれど、僕もたまに暇つぶしに手伝ったりしているし、ユセアナも構わないと言ってくれているので、甘えているのが現状だった。
 いずれにせよ大した問題ではない。
 少なくとも、僕にとっては。
 何せ僕は。

「あぁん、今でも信じらんない! 夢見たいだよぅ、まさか僕が! ああ! ルナス様に触れてもらうことが出来るだなんて!」

 そう、ルナス様の近くにいられる、それだけでこの上なく幸せなのだから。
 僕自身の今の境遇や立ち位置がいったい何だというのだろう。
 僕はあふれる涙を止めることが出来ない。
 勿論、感動の涙である。
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