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第1章・泣き止まない我が妃へ(ルナス視点)

11・君に捧げる花の色①

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 優しくする、とは言っても。それだけではこれまでと何も変わらない。そう思った。
 本当は塔から出せればいいのだけれど、それにはまだ少しばかり時間がかかる。
 彼を塔に捕えたのは、彼を迎え入れることそのものを反対する者が少しばかりであっても存在する為だった。
 しかもそう言った者の中には、なかなかに手段を選ばないと評判の人物も含まれていて、かつ王宮への影響力もある相手で。
 このまま彼を王妃として王宮に迎え入れてしまうと、彼を守り切れないかもしれない状況なのである。
 彼を塔へと留め置いているのは、そんな中で一番彼の安全を確保しやすいからに他ならない。
 そうでなければ誰が好きな相手を、あのような場所へと留め置きたいものか。
 なにせそもそも、問題となっている者達の反対理由は元テュナコル公国側にあり、と、言うかそれを理由にされていて、実際に元テュナコル公国側の過失は明らかで、そこを気にすること自体は何らおかしな行動ではなく。とは言え、勿論それ以上に過剰に何かを仕掛けてくるならそれはそれでこちらも相手を咎められるのだけれどもそこまではせず、だからこそ表立っては対処しづらく、かと言って本当に何か彼に危害が及べばと想像するだけで恐ろしくて。
 ともかくそのような理由があるので、彼をまだ塔から出せない現状はまだまだしばらく変えられる見込みが見当たらなかった。
 彼が早々に身ごもったのはこちらとしても予想外だったのだが、子供が出来たこと自体は大変に喜ばしい。
 ただし、同じような理由により、この後、彼が子供を生んでからも状況が改善されていない場合は、そのまま子供も塔で育てられる予定となっていた。
 勿論、その方が安全だからだ。
 なら何か贈り物を、と思っても、同じ理由で表立って彼へと何か貢ぐことも出来ず、そもそも俺が、例えば夜に彼の元へと訪れる際に、花束など目立つ物を持っていたりなどしたならば、それだけでも周り巡ってどう影響するかわからない。宝石などの予算がかかるようなものなど以ての外だ。
 服は予め不自由ないだろう程度にはそろえてあるし、消耗品と言えなくもないので全く差し入れられないというわけではないだろうけれども、それだって過剰には難しい。
 そんなこんなで、もし何か彼に捧げられるとしたら、花束にもならないような服に忍ばせられる程度の数本の花、あるいはごくごくちょっとした小物程度。
 それでも何か贈りたい。そう思ったらいてもたってもいられなくなって。
 手に取ったのは、花だった。
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