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しおりを挟むだが、成人している。
学園もしっかりと卒業した。
問題ないはずだ。
性欲……――は、正直、前世を思い出す前まではさっぱり覚えたことがなかったのだけれど、それがなんだというのだろう。今はある。あるとも!
ならばやはり問題がないとしか思えない。
そりゃ、確かに、フィムは見上げるぐらい体格がいいし、多分、身長も180、どころか190cmぐらいはあると思う。
対して俺は、確か最後に測った時、150かそれぐらいしかなかったし、体重に至ってはだいたい倍ぐらい違ったんだ気がする。正確には覚えていないけれども。
が、それがなんだというのだろう。
出来ないって程ではないと思うのだ。
いくら年より幼いと言っても、流石に幼児なみってわけでもない。
逆に言うと、だいたい12、13歳ぐらいに見える程度の150cmはあるのだ。
例えば成人男性であっても、小柄ならこれぐらいの身長はあり得ることだろう。
ならやはり何も問題はないとしか思えなかった。
ちょっとぐらいの体格差が、いったい何だというのか。
ついでに大丈夫だと思う理由がもう一つ。
「大丈夫だって。ちょっとぐらい何かあっても、俺、治癒魔術得意だし」
これだ。
なにせこの世界には魔法がある。正確に言うと魔法と魔術は別物で、俺が得意なのは魔術の方だけど。
少しぐらいの怪我や病気なら、この治癒魔術で瞬く間に治してしまえた。
いや、ほんと異世界様様だな!
あと、前世を思い出した、と言っても、これまでこの世界で生きてきたことを忘れたりしてるわけでもないしな!
あっはっは、と笑う俺に、フィムはやはりため息を吐いた。
深く、深く。肺の中の空気を全部吐き出すかのように。
そんな、フィムの様子には、今度は俺が眉を顰める番だった。
「なぁ。本当に、絶対ダメなのか? いいじゃないか。状況だってちょうどいい。むしろ周囲もこんなの、お膳立てしてくれてるみたいなもんだろ。なんでダメなんだよ」
言い募るように、今度は今の状況を指し示してみる。
これもはやり貴族ってやつだなぁなどと思ってしまう、上部がアーチ状になっている大きな格子窓の外は暗く、とっぷりと夜も更けてることがよくわかる。
夕食も疾うに済んで、風呂にも入って、あとはもう寝るだけというような時間。
場所はフィムの家、というか屋敷? のフィムの私室のベッドの上。
おあつらえ向きに二人っきり。
廊下まで出てしまうとわからないけれども、少なくとも室内には使用人も誰もいない。
いくら婚約者同士だからと言って、何の意図もなくこんな状況になんてなるわけがない。
そう、俺たちは婚約者同士なのだ。
家族や周囲全部ひっくるめて、俺たちがそういう関係に陥っても、反対する者なんて誰もいない。
その結果子供が出来たって、そりゃ、ちょっと順番が、とならなくもないだろうが、たいして問題にはならないことだろう。
これでどうして出来ないなんて言うのか。
確かに、今まではあり得なかった。
こんな状況には今まで幾度もなったことがあるけれど、何かがあったことなんて一度もない。
俺の方にそんなつもりは微塵もなかったし、許さなかったし。
何よりフィムを信頼していたから。
否、そもそも、思い至りもしなかった。
前世を思い出すままでの俺は、本当にまるっきり子供だったんだ。
何よりもその、精神が。
知識はあっても、大人ではなかった。
でも今は違う。
俺は前世を思い出して、前世でも成人していたし、当然、今の俺の内面も子供ではなくて、それで、だから。
「なぁ! いいだろ! 子供作ろ? てゆっか、セックスしようぜ!」
ちゃんと、今の俺なら、性欲、とかそんなんがわかるんだから。
「それとも、前世を思い出した俺だと嫌なのかよ」
そこまで思い至って、途端なんだか悲しくなってしまう。
子供っぽく口は尖るし、目の辺りが熱くなった。
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