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しおりを挟む何故そう言い切れるのかというと、単純な話、シェラと俺とだと、単純な魔力量だけで見ても比べ物にならないからだ。
加えて俺自身が扱える魔法や魔術をはじめ、あるいは王宮のいたるところに展開されている結界とでも言えばいいのか、防御魔術など。
それらは全て俺の元へと悪意や害意が届かないようになっている。
そう言った意図を見逃さない優秀な護衛や女官なども傍にいて、どうして反意ある者が俺に近づけるというのだろう。
俺は王族で、当たり前に守られていて、だから。
(シェラに俺を害するつもりはない)
それだけは断言できる事実だった。
だからこそわからないのだ。
そこで思考が止まってしまう。
現状はどう考えても異常なのに、なぜそうなってしまうのか。
前世の記憶は理由の一つではあるだろう。
だけどそれだけとは思えない。
これはラティも同じ考えなのだろう、だからこそシェラを俺から遠ざけたがっているのだろうから。
俺の罪悪感にさえ目をつぶることが出来たなら。
ラティに、全てを任せてしまうのがいい気がした。
そんなことはわかっている、分かっているのだ、だけど。
(ここで、ラティに全部任せてしまうのは、多分駄目なんだ)
俺が、俺であるためにも。
否、俺が今後、少しでも憂いなく過ごしていくために。
(こんなの、ただの俺の自己満足だ……)
我儘と言い換えてもいい。
他でもないラティの心配や気遣いを無碍にしている。
ただ、ラティが俺の意図を可能な限り汲もうとしてくれるのに甘えている。
だからこそ。
(このままじゃダメなんだ……シェラと、俺はちゃんと向き合わなきゃいけない)
シェラと。否、思い出してしまった前世と。何より、俺自身と。
そう決意して初めて見えてきた不審。
何かある。
何もないわけがない。
鍵を握るのはシェラ。それは間違いなくて。だから、結局。
(問題は俺が、シェラと対峙すると、冷静さを欠いてしまうこと)
魔術だとか、そういうものではないから、手っ取り早くどうにかしてしまえないというのが、厄介と言えば厄介だった。
(ああ、でも……――)
シェラもラティも傍にいない午後。
そこまで思考を巡らせて、もう一つのことに思い至る。
(ラティが、いれば)
ラティが傍についていてくれれば。
シェラにわけのわからない慕わしさを覚えるのは変わらない。
姿が目の届く所にあるだけで安心するのは同じだ。
だけどそれでも、ラティがいない状況で、シェラと共にいる時の比ではなくて。
ラティの方がシェラよりも勿論、俺にとっては大きな存在に他ならないので。
(ラティがいれば――……なんとかなる、かな……?)
もう少し気持ちを落ち着けて。何なら、そう言った方面に作用する魔術の行使も視野に入れて。ラティにも手伝ってもらったら。
頭の中で色々と、これまで習ってきた魔法や魔術、他のことも考慮して決めた。
ラティが見兼ねてシェラを遠ざける前に。
改めてシェラと対峙しようと、そう。
逆に言えば。
俺が出来ることなど、それ以外にはきっとないのだから。
そうして時間を設けたのは、そこから更に一週間ほど後のことだった。
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