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しおりを挟む今なら、そこまでの衝撃なんて受けない自信がある。
でも、あの時のルニアは俺じゃないし、ならば仕方がないのかもしれないとも同時に思う。
ルニアは……なんと言えばいいのか、ひどく繊細な性質だったのだ。
俺自身ではあるのだけれど、今の俺からすると、それは呆れてしまうほどに。
中途半端に前世で読んだ小説の内容を夢で見てしまっただとかが良くなかったのかもしれない。
ルニアは学園の高等部に入った辺りから、ひどく怯えるようになってしまっていて、自分が、誰かに、おそらくは主にシェラによくないことをしてしまうのではないかと、そればかりを気にしていて。
だからこそ学園でも、シェラが自分のすぐ近く、目の届く範囲で心安らかに過ごしているように見えることを心の底から安堵していた。
否、そうでなければ不安定になってしまいそうなほど、『シェラが近くにいる』ということそのものに依存気味になっていたと言ってもいい。
もちろん、ラティはそう言ったルニアの様子を理解、把握していたし、そう言った事情も踏まえて、シェラがルニアの側にいることを許していた部分がある。
小説の舞台はあくまでも学園内、あるいは学園に在学中のみで、作中のルニアは結局、卒業には至らなかった。
その直前で全ての罪が詳らかにされ、厳刑に処されたからだ。
多少の嫌がらせならともかく、国に対する謀反と言えば良いのか、反逆とも言えるようなことを目論んでいたのだから、それも仕方のないことだったと言えることだろう。
ルニアは、当たり前のことなのだが、小説とは違って、ごくごく普通に学園を卒業した。
おかげでシェラへの依存のような状態もほとんど気にならなくなったし、ルニアの精神も随分安定していたことだろう。
そのまま、何もなければシェラとは自然疎遠になって、過度に何かを気にかけたりなんてせずに生きていける、はずだった。
よりにも寄って婚姻式の際の夜会で、あのような場面を目にするまでは。
ルニアは余程にひどく打ちのめされてしまったのだろう。
シェラが視界にいなければ酷く取り乱すようにまで成ってしまっていたので、シェラの侍従就任は言うならば苦肉の策。
おそらく全てを手配したのはラティだろう。
どれもこれも皆、ルニアが心安らかに過ごせるようにと。
思い出した、思い出せた。
予想よりもずっと、言い方は悪いのだが、大したことがなくてなんだか拍子抜けしてしまった。
その割に意識を飛ばすだとか、そんなことにはなったのだけれども。
「全ては、ルニアが弱いから。ラティは殊更ルニアを、大事にしていたってことなんだろうな……」
改めて思い返すと、学園の頃も含め、ルニアのシェラへの依存は異常だ。
そりゃ確かに、シェラはものすっごくかわいいし、性格もいいし、なんだったら天使かな? とかなんだとかすら思うけれども。
かと言って、あそこまで依存するほどか、と言えば、今の俺だと疑問に思う。
だけどルニアにはわからなかったのだろう。
自覚も把握も何も出来ていなかった辺り、結局ルニアは神経が細く、繊細で精神的に強くなかったというそれだけの話なのかもしれない、そう思った。
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