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*19-1・おねだり
しおりを挟む「ぁっ、ぁっ、は、……ぁあっ!」
視界が揺れる。
俺はただ、気持ちよさに酔う。
お腹の中に熱が滞って、自分がこれを求めていたのがわかった。
だって、幸せで。
自分がいったい今、どんな体勢でいるのかだとか、そんなことすら自覚できないまま、でも俺は安心して、与えられる快感を享受していた。
「ぁっ、ぁあっ! ぁ、」
口から洩れるのは意味を成さない言葉ばかり。
でもそれでいい、それ以外なんていらない。
だって嫌じゃないからいやだなんて言わないし、何より言葉を紡げるほど、理性もない。
反射的に口から出る上擦った息をただ吐いているだけで。
「ぁっ、ぁあぁぁぁぁぁああああっ!」
揺さぶられるまま声も揺れ、だけどそんな自覚もなく。
切なく、漏らした吐息は、
「っ、るに、あっ……! ぅ、んっ……」
「ぁんっ、んんっ!」
息を詰めたラティに飲み込まれた。
ああ。
ラティ。
気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。
これを俺にもたらしているのがラティであることが嬉しい。
ただ、それだけが幸せ。
だから、ラティ。
俺を……――。
――……だとかなんだとか言う風に、あの、改めてラティと閨を共にした日を境に、俺は毎晩、同じようにラティと体を繋げるようになっていた。
決まって早いうちに、ラティは俺を魔力で酔わせてくれるので、自分がいったいどんな醜態を演じているのだとか、そういうことは全く何にも記憶にない。
ただ、気持ちいいことしかわからない。
そして終わるとお腹の奥にぐるぐると溢れんばかりにラティの魔力が凝っていた。
もちろん、そのほとんどは、子供を育てる糧となり、同時に余剰分は、俺の体中を巡り馴染んでいく。
俺の魔力となって、俺へとしみ込んでいく。
まるで一つの存在になっていくみたいだと息を吐いた。
ついで自分の思考が恥ずかしくなる。
別々に分かたれて存在している人間同士が、一つになんてなれるはずがない。
だけど体を繋げている時ばかりは、自分たちの境界線が曖昧になっていくように思えるのは確かで。
ラティ以外とは経験のない俺には、それが普通なのかどうかすらわからなかった。ただ。
「いや、ではないし……一応、ちょびっとだけ……手加減、は、してくれてる、みたいだし……」
だって、何日にも渡ったりなんてすることはないし、そりゃ確かに、朝起きた時には……つまり正気に返った時には、ラティを受け入れていたのだろうお尻には違和感しかないし、いっぱい突かれたのだろうお腹の奥は、なんだか鈍く痛んだり疼いたりするし、行為そのものはおそらく激しいのだとは思う。
だけどそれでも実は、記憶を取り戻す前までの毎朝ほどには、ひどい状態というわけではなくて。
要するに程度としては軽く感じられるのである。
それはラティが手加減をしてくれている、何よりの証拠だと俺は認識していた。
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