上 下
77 / 141

*19-1・おねだり

しおりを挟む



「ぁっ、ぁっ、は、……ぁあっ!」

 視界が揺れる。
 俺はただ、気持ちよさに酔う。
 お腹の中に熱が滞って、自分がこれを求めていたのがわかった。
 だって、幸せで。
 自分がいったい今、どんな体勢でいるのかだとか、そんなことすら自覚できないまま、でも俺は安心して、与えられる快感を享受していた。

「ぁっ、ぁあっ! ぁ、」

 口から洩れるのは意味を成さない言葉ばかり。
 でもそれでいい、それ以外なんていらない。
 だって嫌じゃないからいやだなんて言わないし、何より言葉・・を紡げるほど、理性もない。
 反射的に口から出る上擦った息をただ吐いているだけで。

「ぁっ、ぁあぁぁぁぁぁああああっ!」

 揺さぶられるまま声も揺れ、だけどそんな自覚もなく。
 切なく、漏らした吐息は、

「っ、るに、あっ……! ぅ、んっ……」
「ぁんっ、んんっ!」

 息を詰めたラティに飲み込まれた。
 ああ。
 ラティ。
 気持ちいい、気持ちいい、気持ちいい。
 これを俺にもたらしているのがラティであることが嬉しい。
 ただ、それだけが幸せ。
 だから、ラティ。
 俺を……――。



 ――……だとかなんだとか言う風に、あの、改めてラティと閨を共にした日を境に、俺は毎晩、同じように・・・・・ラティと体を繋げるようになっていた。
 決まって早いうちに、ラティは俺を魔力で酔わせてくれるので、自分がいったいどんな醜態を演じているのだとか、そういうことは全く何にも記憶にない。
 ただ、気持ちいいことしかわからない。
 そして終わるとお腹の奥にぐるぐると溢れんばかりにラティの魔力が凝っていた。
 もちろん、そのほとんどは、子供を育てる糧となり、同時に余剰分は、俺の体中を巡り馴染んでいく。
 俺の魔力となって、俺へとしみ込んでいく。
 まるで一つの存在になっていくみたいだと息を吐いた。
 ついで自分の思考が恥ずかしくなる。
 別々に分かたれて存在している人間同士が、一つになんてなれるはずがない。
 だけど体を繋げている時ばかりは、自分たちの境界線が曖昧になっていくように思えるのは確かで。
 ラティ以外とは経験のない俺には、それが普通なのかどうかすらわからなかった。ただ。

「いや、ではないし……一応、ちょびっとだけ……手加減、は、してくれてる、みたいだし……」

 だって、何日にも渡ったりなんてすることはないし、そりゃ確かに、朝起きた時には……つまり正気に返った時には、ラティを受け入れていたのだろうお尻には違和感しかないし、いっぱい突かれたのだろうお腹の奥は、なんだか鈍く痛んだり疼いたりするし、行為そのものはおそらく激しいのだとは思う。
 だけどそれでも実は、記憶を取り戻す前までの毎朝ほどには、ひどい状態というわけではなくて。
 要するに程度としては軽く感じられるのである。
 それはラティが手加減をしてくれている、何よりの証拠だと俺は認識していた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 時々おまけのお話を更新しています。

総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?

寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。 ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。 ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。 その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。 そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。 それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。 女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。 BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。 このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう! 男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートの威力はすさまじくて……!? 溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。

乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

王家の影一族に転生した僕にはどうやら才能があるらしい。

薄明 喰
BL
アーバスノイヤー公爵家の次男として生誕した僕、ルナイス・アーバスノイヤーは日本という異世界で生きていた記憶を持って生まれてきた。 アーバスノイヤー公爵家は表向きは代々王家に仕える近衛騎士として名を挙げている一族であるが、実は陰で王家に牙を向ける者達の処分や面倒ごとを片付ける暗躍一族なのだ。 そんな公爵家に生まれた僕も将来は家業を熟さないといけないのだけど…前世でなんの才もなくぼんやりと生きてきた僕には無理ですよ!! え? 僕には暗躍一族としての才能に恵まれている!? ※すべてフィクションであり実在する物、人、言語とは異なることをご了承ください。  色んな国の言葉をMIXさせています。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 時々おまけを更新しています。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼第2章開始!毎週、月・水・金に投稿予定。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。

処理中です...