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しおりを挟む思い出したこと、否、思い至れたことは大きなことで言うと2つ。
1つは、ラティがどこまでも、真実ルニアを求め、愛してくれているということ。そして何よりもルニアを気遣ってくれている。
もう1つは、やはりラティは優しいということだ。
俺が前世で推していた、心奪われていた人物像と、根本的には大きな違いがないということ。
ルニアを部屋に閉じ込め、外へと出ないように言う。
あるいは長時間、ルニアの意思を無視して閨の中で拘束する。
もともと俺の持っていたラティのイメージからは、そんな、強引なことをするようには思えず、そしてそれは間違ってはいないのではないかと、思い返して、改めてそう感じたのである。
つまり結局、今のこの状況は、違和感を覚えずにはいられないとそう言う話だった。
ソファに深く腰掛け、そんな風に思考の海に沈みながら、ちらと視線を巡らせる。
確認したかったのはシェラの様子。
前世から俺が天使だと思ってはばからない存在であり、同時に今の俺にとって、ラティ以外では唯一と言っていいほど身近な存在とも言えた。
そのまま、今までをゆっくりと改めて思い出していく。
この数日でもう何度も呆れるほどした作業だ。
それを今、改めてもう一度行ってみる。
昨夜を踏まえたからこそ、そこを含めて改めて。
ラティは……変わらない、と思う。
昨夜、敢えて俺を酔わせた。
その事実からしても、ラティに変化があったとは思えない。
ルニアが望まない限り、ラティは俺を閉じ込めたりなんてしないはずなのだ。
逆に言うと、部屋から出られない今の現状は、ルニアが望んでいたことということになるのである。
当然、そんな記憶は何処にもなかった。
だが反面、昨夜、魔力に酔わされた、それは、ルニアが望んでいたことなのではないかとも思った。
ラティの意思や希望、欲求がないとは思わない。
だがラティならば自分のそんなものよりも、ルニアの要求をこそ優先する。
俺は昨夜、ラティを受け入れようと決めた。
かと言って、実際には落ち着けきれたわけではなく、自分の状況の限界などを含め、とりあえずはと、そう判断しただけに過ぎず、気持ちの整理がつけ切れたわけでもなかった。
そんな諸々はとりあえず置いておいて、だけどラティを受け入れよう、そう考えたのである。
だって寂しかったから。
ラティに、触れて欲しかったから。
だけど、ならば前世を思い出す前までと全く同じようにラティと接せられるのかというと、それはまた別の話で。
正直なところ、魔力に酔わされ、前後不覚になったのだけれど、それでよかったのではないかとすら思っている。
そしてきっとそんな俺を、ラティは見抜いていたのではないかとも思った。
だって今までのラティならそうだったから。
ルニアが何も言わずとも、何もかも察して、先回りして叶えてくれていたから。
昨夜のこともきっと同じはずだ。
恥ずかしい、恥ずかしくて恥ずかしくて堪らないけど、だけど、酔わされていない状況で閨を過ごすよりは、それでもましなのではないかとも思うのである。
ラティは多分、ラティが取れる手段のうち、一番俺が望むことに近いと判断したものを実行に移したのだ。
ただそれだけの話。
だったら、まだ、部屋から出てはいけないというのも、きっと。
俺が考えなければならないのは、ラティやシェラではなく、要は俺自身なのだということだった。
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