【完結】気がつけば推しと婚姻済みでかつ既に妊娠中だったけど前世腐男子だったので傍観者になりたい

愛早さくら

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 声だけではない。
 自分の体勢も、状況も何もかもよくわからない。
 頭がくらくらしてふわふわして気持ちいい。
 それだけ。
 たったのそれだけ。
 こんな所も一度目とは違うしなんだったら、その前のルニアとしての日々とも違う。
 自分がどうなっているのか、何もかもがよくわからないだなんて。

「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! んっ! んんぅっ……ぁ、」

 何度も何度もくちづけられ、上からも下からも・・・・・・・・魔力を注がれ、俺はもう、魔力が足りないどころか、ラティの魔力でいっぱいになっているんじゃないかとすら思った。

(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいっ……!)

 思考がかすむ。
 それしか考えられない。
 いつしか、大きく開かされた俺の両足の間にはラティの体が入り込んでいて、持ち上げられているらしい俺の足が、視界の端でゆらゆらと揺れていた。
 否、揺れているのは俺自身か。
 とにかく気持ちよくて堪らなくて、そして体全部、とりわけお腹の奥が熱くて。
 どうやら疾うにそこ・・に直接、魔力を注がれているようだということだけ理解する。

「ルニアっ、ルニアっ、ルニアっ……!」
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! あっ!」

 ラティが何度も何度も俺の名を呼ぶ。
 俺は何も答えられず、ただ成すがまま、開いたままの口からは、意味のない喘ぎ声ばかりが零れ落ちていく。

「ぁあっ!」

 がつんっ、と、火花。
 頭の奥で、何かが弾けるよう。
 同時に、お腹にも火傷しそうな濃い魔力が、幾度も幾度も注がれて。

(気持ちいいい、気持ちいい、気持ちいい……もっと、もっと、もっとっ……!)

 浅ましく、自覚なく。
 伸ばした手は、

「ああ、ルニア」

 愛しいと、眼差しで語るラティに捕えられ、

「ら、てぃ……さまぁっ……ぁあっ!」

 満足に名前も呼び返せないまま、また揺れる視界に何もかもわからなくなっていった。
 嗚呼。

「ルニア」

 呼ばれる俺の名。
 それがどうしてこんなにも愛しいんだろう。
 わからない。
 何もわからない。
 今の自分の状態も何もかも。
 気持ちいいということしかわからない。
 思考もままならなくて、なのに。

「ルニア」

 俺の名を呼ぶラティだけが確か。

「ぁっ、ぁっ、ぁんっ、んあっ! あぁっ!」

 上がる自分の声もわからない。
 ふわふわして気持ちよくて、気持ちよくて。
 そして、そんな眩むような時間は、どうやらそれなりに長く続けられたようなのだった。
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