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*16-6
しおりを挟む声だけではない。
自分の体勢も、状況も何もかもよくわからない。
頭がくらくらしてふわふわして気持ちいい。
それだけ。
たったのそれだけ。
こんな所も一度目とは違うしなんだったら、その前のルニアとしての日々とも違う。
自分がどうなっているのか、何もかもがよくわからないだなんて。
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! んっ! んんぅっ……ぁ、」
何度も何度もくちづけられ、上からも下からも魔力を注がれ、俺はもう、魔力が足りないどころか、ラティの魔力でいっぱいになっているんじゃないかとすら思った。
(気持ちいい、気持ちいい、気持ちいいっ……!)
思考がかすむ。
それしか考えられない。
いつしか、大きく開かされた俺の両足の間にはラティの体が入り込んでいて、持ち上げられているらしい俺の足が、視界の端でゆらゆらと揺れていた。
否、揺れているのは俺自身か。
とにかく気持ちよくて堪らなくて、そして体全部、とりわけお腹の奥が熱くて。
どうやら疾うにそこに直接、魔力を注がれているようだということだけ理解する。
「ルニアっ、ルニアっ、ルニアっ……!」
「ぁっ、ぁっ、ぁあっ! あっ!」
ラティが何度も何度も俺の名を呼ぶ。
俺は何も答えられず、ただ成すがまま、開いたままの口からは、意味のない喘ぎ声ばかりが零れ落ちていく。
「ぁあっ!」
がつんっ、と、火花。
頭の奥で、何かが弾けるよう。
同時に、お腹にも火傷しそうな濃い魔力が、幾度も幾度も注がれて。
(気持ちいいい、気持ちいい、気持ちいい……もっと、もっと、もっとっ……!)
浅ましく、自覚なく。
伸ばした手は、
「ああ、ルニア」
愛しいと、眼差しで語るラティに捕えられ、
「ら、てぃ……さまぁっ……ぁあっ!」
満足に名前も呼び返せないまま、また揺れる視界に何もかもわからなくなっていった。
嗚呼。
「ルニア」
呼ばれる俺の名。
それがどうしてこんなにも愛しいんだろう。
わからない。
何もわからない。
今の自分の状態も何もかも。
気持ちいいということしかわからない。
思考もままならなくて、なのに。
「ルニア」
俺の名を呼ぶラティだけが確か。
「ぁっ、ぁっ、ぁんっ、んあっ! あぁっ!」
上がる自分の声もわからない。
ふわふわして気持ちよくて、気持ちよくて。
そして、そんな眩むような時間は、どうやらそれなりに長く続けられたようなのだった。
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