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12-1・今までとこれからと
しおりを挟むルニアは家族からいっそ溺愛と言っていいほどには可愛がられている。
そんな風に思うのは今の俺だからこそで、だが、以前の俺にだって、家族仲がいい、という程度の自覚ぐらいはあった。
だからというわけではないが、ルニアは特に家族に隠し事などと言うことをしたりしなかった。
どころか、聞かれるがままに何でも答えていたと言ってもいい。
今にして思うと、
(いやいやいや、それ家族に言うようなことじゃないだろ、俺ー!)
などと頭を抱えたくなるようなことも全て、だ。
ちなみにそう思うのは主にラティとのことなのだが、それはともかく、おそらくはその一環で、シェラのことも話していたのだろうと思う。
だからこそ両親はシェラが覚醒者だということを知っていたのだ。
そして、ルニアがシェラに、以前からいろいろな意味で助けられていることも理解していたのだろう。
そうでもなければ、あのような言い方などしないことだろう。
なにせシェラはあくまでも一侍従。何よりあくまでもここ、ランティエイザ王国の王宮に仕えている侍従なのだ。ルニア付きの侍従ではあるけれども、イバティエイザ王国にいる両親が手配した人員ではない。
普段からルニアを支えてくれているのは確かだけれども、だからと言って両親の口から、安心だとかいう言葉が出てくるような立場ではなかった。
それこそ、学生時代からの親しくなったきっかけなどを含め、俺が忘れていることも全て、両親が把握でもしていなければ。
(多分、話したことがあったんだろうなぁ……ルニアが、自分で……)
あるいはラティが、シェラが俺の側近くにいることを、許している理由でもあるのかもしれない。
(俺ってほんと、どれだけ……)
周りから甘やかされていると言えば良いのか、頼り過ぎだと思えばいいのか。
(つくづく、小説の中のルニアとは違う……)
何より俺自身の、今の感覚とも。
(何か、焦ってでもいたのか、だとか、そんな風に思っていたけど……)
あるいは怯えてでもいたのか。
自分の行動を思い返して、今の俺からすると、どうにも理解しずらいことがそれなりにあったようなのだ。
それらの理由が、もしかしたらシェラが教えてくれた、前世のことだとは認識せずに見ていた夢とやらにあるのかもしれない、そう思った。
シェラも取り乱していたとも言っていたし、おそらく間違いないだろう。
(でも、なんで忘れてるんだろう……)
所々曖昧になっている記憶。
どこがどうわからなくなっているのかすら把握しきれないそれがつまり、これまでの俺自身を、見つめ直すきっかけとなるのではないかとも思う。
あるいは、今を受け入れる為の指標。
(もう一度ゆっくり考えてみよう)
ラティが、落ち着くようにとくれた時間は1週間。
状況的に、俺自身の感覚からすると、きっとそこまでの時間は取れないと思う。
長いようで短い。
つまりそれが、俺が俺自身のこれまでを、探し出す為の時間だった。
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