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11-1・もう一人の

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「シェラも……覚醒者だったんだな」

 通信が終わって。
 途端、寂しくも静かになった部屋の中、俺の呟きがポツとやけに大きく辺りに響いた。
 ビクン。体を震わせたのは他でもないシェラ本人。
 他にも控えている侍従や護衛達は反応を見せなかった。
 多分、自分たちの話題ではないからなのだろう。
 それに今、俺は彼らに、何も命じてはいないから。
 王宮に勤める者として、特に過不足のない彼らは、主人が望まない限り、余計な反応などを無作法に見せたりしないのである。
 そういう意味で言うと、シェラは王宮の侍従としては、随分と気安い態度だったなと今更ながら思い至った。
 そしてそれは俺が前世を思い出す前からの話で。
 ルニアはなぜかシェラにだけ、その態度を許していたのだ。
 学園で、同級生だったというのもあるだろう。
 何処をどう思い出しても、親しい友人などおらず、幾人かの高位貴族の令嬢令息と当たり障りなく接する以外では、ラティと常に共に過ごし、そうでなくば、シェラぐらいとしか関わって来なかったルニアにとって、シェラはつまり、唯一の友人とも言えるような存在で、俺はてっきり、だから、他の侍従と少し違う態度で接しているのだろうとばかり思っていたのだけれど。
 どうやら理由は、それだけではなかったのかもしれない。
 なぜならばそれはあくまでも、ルニア側の事情でしかないからだ。
 俺はこれまで、シェラはそれを汲んでいるのだとばかり思っていた。だけど。
 覚醒者。つまり、シェラもまた、前世の記憶を持っているということ。
 そうなると少しばかり話が変わってくる。
 俺自身がそう・・だから、よくわかるのだけれど、前世の記憶というものは厄介で、どうしても感覚が、多少なりそちらに引きずられてしまうのである。
 そして前世でも、今世と同じような立場のままである可能性は、俺が知る限り限りなく低いと言わざるを得なかった。
 つまり庶民的な感覚が、拭い去れないということだ。
 もちろん、前世の記憶をいつ・・から持っているかによっても変わってくるので一概には言えないのだけれど。
 シェラはどうなのだろうか。
 思いながらなんとなくシェラをじっと見つめてしまった。
 シェラが覚醒者だというのは、先程までの通信の最後に、父がさらと口にした言葉により発覚したことだった。
 いったいどういう話の流れだったか、いや、それにしても、と。

『シェラと言ったか。変わらず側近く仕えてくれているみたいだね。よかった、同じかはともかく、覚醒者であることは間違いない彼が近くにいるなら、少しは安心できそうだよ』

 と、近くに控えていたシェラの姿を通信機越しに目にとまったのだろう、父はそう言って、ははと明るく笑っていたのである。
 俺はびっくりして目を一瞬、目を見開いてしまったけれど、ただ、そのすぐ後、母がまた違う話題を振ってきたので、そちらに気を取られ、そのことに関しては、深く掘り下げたりすることも出来ず、通信を終えての今だった。


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