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*04・後悔と、だけど
しおりを挟む正直に言うと。俺はあの瞬間、いろいろなことを考えられていたわけではなかったし、むしろ起き抜けからこちら、突然に蘇った前世の記憶らしきものに翻弄されていて、だから一番強く願った、前世からの希望を口にしたに過ぎなかった。
色々な配慮に欠けていた。
それは俺も充分に反省している。
だって、前世で好きだったBL小説はともかく、ルニアの記憶のどこを紐解いても、ラティとシェラが引かれ合っているだとか、特別仲が良かっただとか、そんなものは欠片も見つからなかったのだ。
にもかかわらず、俺は自分の欲望にあまりにも正直だった。
でも、誰でも思うだろ?
推しを眺める壁になりたいとか、そういうのって。
モブとか何とかそんなんじゃない、むしろ自分が関わるだなんて邪魔になるだろうと思う、だからもういっそ壁になりたい、傍観者でいさせて欲しい。
それは前世からの俺の夢だ。俺の願望で欲望だ。俺の都合だけに支配されたそれ。
あまりに傲慢で自分勝手で。
わかっている、少し冷静になればわかる、いくらテンパってたからってあれはない、どう考えてもあり得ない、わかっているのだ、だけど。
だからといって。
――…………これはないんじゃないだろうか。
「ぁっ、ぁっ、ぁっ、いやぁっ……! ゃっ! もぉ、むりぃっ……! つよぃいぃ……っ! おく、もぉいやぁっ……! ぁあっ!」
どれだけこうされているのだろう。
もはや全くわからない。
がくがくと揺さぶられる視界。
ずちゃずちゃとひっきりなしに聞こえてくる淫靡な水音。
ぱんぱんと、肌と肌がぶつかる音。
そんなもの全ての認識が難しくなるぐらい、俺はただ快感に咽び泣いていた。
お腹の中がいっぱいだ。
これでもかと奥まで入り込まれ、容赦なくがつがつと穿たれ、いっそ痛みさえ感じそうなほどなのに、快感に慣れ切ったこの体は、その全てを気持ちよくしか感じられない。
それでも気持ちよすぎて辛かった。
俺は初めて、過ぎた荒淫は拷問にも等しいなどと言うことを、身をもって体験している真っ最中だった。
いったいどれぐらいこうされているのか。
あの後。
あの、俺の、物凄い問題発言の後だ。否、問題発言というか、自分の欲望に正直すぎた願望に対する懇願というか、その後。
にっこりと笑顔ではっきりと、俺の懇願をはねのけたラティは、俺が戸惑って我に返れないでいる間に、俺をさっと抱き上げて、とっとと寝室へと戻っていた。
そしてそのまま押し倒されて、上に圧し掛かられて、衣服を剥ぎ取られて、それで。それで……――今に至る。
「ぁっ、ぁっ、ぃやっ、もぉいやっ、いやぁっ……!」
気持ちよかった。気持ちよすぎて辛かった。
がくがくと揺さぶられながら、衝動のまま、悲鳴だか嬌声だか拒絶だかもはやよくわからない声を上げるばかりの俺を、ラティは初めから変わらない激しさで苛み続けている。
「ぅっ、くっ……! ルニアっ、ルニアっ、ルニアっ……! ぅっ!」
「ぁあっ!」
どくん、どくん、幾度目か、体の奥で熱を感じた。
多分きっとラティが達したのだろう、吐き出された熱は渦を巻いて、俺の体中を駆け巡る。そして最後には腹に戻って、ますます俺を苛んだ。
俺も何度目か、頭が真っ白になるような絶頂に追いやられ、だけどラティの動きは止まらない。
「やぁっ、やぁっ、イってるっ! イってるからぁっ! もぉいやぁっ……!」
イきすぎて辛くって、感じすぎて怖くって、俺はもうやめて欲しかった。
いい加減開放して欲しかった。だけど。
「ルニア、ルニア、ルニアっ、駄目、だよっ、まだ足りない、そうだろう? あんなことを言い出すなんて……私の愛が足りなかったんだ、だからっ、ルニアっ……!」
足りないだなんて、そんなわけがない。
ただ俺が考えなしだっただけだ。
だけどそんなこと、今、口に出せるような状態じゃなくて。
「ぁあぁぁぁあああぁぁぁっ、やぁっ……!」
ラティの動きに合わせて、喘ぐだけしか出来なくて。
そしてそれはいっそ、終わらないのではないかと思うほど、長く……――長く、続けられたのである。
ああ。俺が悪かったんだ、わかっている。きっとこうなったのは俺の発言がきっかけだと思う、そんなこと俺も、今ならわかるんだ。でも。それでも。
これはないだろう……?
(あ、ああ、あ、あり得ないっ……!)
思う俺の心は、どこに届くはずもなかった。
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