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しおりを挟む(あ~~、やっぱかっこいぃ~すげぇ、押しが動いてしゃべってる!)
うっかりうっとりと感動してしまうが、もちろんそんな場合ではない。
いや、だって前世で読んでいたのは小説だったし、見た目のイメージは表紙ぐらいでしかわからなかったのだ。
とは言え勿論、俺の中にはしっかりと想像している姿があって、今、実際に目にしたラティは、俺の想像通りでありながら、全くそれを上回る勢いでかっこよかった。
キラキラして眩しくてドキドキする。
シェラもあんまりにも可愛くって悶えたのだけれど、流石は最押し! それ以上だ。
ラティ。プアラティカ・ランティエラ。
ここ、ランティエイザ王国の第一王子であり王太子。
ルニアの幼い頃からの婚約者で……――否、ルニアとしての記憶を紐解く限り、数か月前にすでに婚姻を結んでいるので、伴侶であり、目覚めてすぐに理解せざるを得なかった、今、俺のお腹の中で成っている子供の父親である。
子供。
何とか我に返って思考を巡らし始めたのだが、今度はそちらを意識してしまって、またしても思考が固まりそうになる。
が、そんなものはそれどころではなくすぐにも目の前の存在に奪われてしまった。
「ああ、ルニア、様子がおかしいと聞いたぞ、どうしたんだ? 何かあったのか? すまない、やはり起きるまでそばについていればよかった!」
だって言いながら、近くにいたシェラを押しのけるようにしてぎゅっときつく抱きしめられてしまったのだから。
声までかっこいいし、動きも何もかもが理想以上で、物凄くドキドキして、それだけでいっぱいになって、俺はまたしてもうっとりとぽぅっとなってしまう。
まるで縋るように、だけど力強く俺を抱きしめてくるラティの腕の中は、なんだが物凄くいい匂いがした。
「ラティ様……」
まるでそうするのがごくごく自然だとでも言わんばかりに、俺の方からも抱きしめ返して……――そこでようやく、びくと何度目だろう我に返った。
(いや、だから違う、違うってっ……! 何っ?! この状況!!)
俺にとってはもう、何もかもがわけがわからなかった。
「……ルニア?」
当然、腕の中にいるのだから、俺の様子なんてラティに全て筒抜けなわけで。
俺が知らず身じろいだからだろう、ラティが不審そうな声を出す。
「……本当に、どうしたんだ? ルニア……?」
少しだけ体をはなし、だけど依然抱きしめたまま、物凄く心配そうに顔をのぞき込まれ、その顔があんまりにかっこよすぎて。
(あ~~! だから、やっぱり……かぁっこいぃ~~~!!)
ほとんど反射的に見惚れながら、ドキドキしすぎて俺はいっそ心臓が止まってしまうんじゃないかと思うばかりなのだった。
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