【完結】気がつけば推しと婚姻済みでかつ既に妊娠中だったけど前世腐男子だったので傍観者になりたい

愛早さくら

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 理由は……――わかっている。
 すぐに思い当たった。
 傷などがあるわけではないだろう。関節の痛みや違和感などがあるわけでもない。
 だって多分治癒魔術を使ったから。
 だけど治癒魔術ではどうにもならないもの。それは倦怠感だ。
 疲労に関しては、そういった魔術で治しきれるようなものではなかった。
 勿論、ある程度は緩和される。しかし『疲れている』と感じることそのもの、『全身が怠い』と思うことを、全く失くしてしまうことはできない。
 少なくとも、ルニアや――の使用できる治癒魔術では。
 もし、治癒魔術を使っていなければ、俺は今、どれほど不調だったことだろうか。
 そこまで想像して内心で冷や汗が流れたのである。
 記憶・・は比較的新しい。すぐに思い出せた。

(ち、治癒魔術を使用してなお、疲労が残るぐらいってっ……! どう考えてもやり過ぎ・・・・だろっ!)

 いったい何がやり過ぎ・・・・なのか。わかっていてなお、敢えて思考の外へと追い出すことにする。
 そして敢えて改めて微笑みを作った。

「少なくとも、寝ていなければならないと思うほどじゃないから」

 重ねて問題ないと告げると、

「そうですか? でしたら、すぐに身支度を整えてしまいましょうか。きっと今にも殿下・・がいらっしゃるでしょう。そうしたら本当に起きれなくなってしまわれる・・・・・・・・・・・・・かもしれませんから」

 寵愛が深すぎるのも考えものですね、なんて。
 慈悲深く笑うシェラは本当に眩しいほどに天使だったのだけれど。
 反対に俺は、浮かべた微笑みが引きつりそうになっていた。

(あぁ~~~! やっぱりかんわいぃ~~~! 流石主人公だけあるわ! 推せる! いや、俺の最押しは譲れないけど! って、殿下ってっ……! 殿下ってっ……!)

「あれ? お仕事がお忙しいんじゃないの? ただでさえ僕は何もお手伝いできていないし……」

 気遣わしげにそう確かめたのは、今までのルニアの行動・・・・・・・・・・をなぞっただけ。
 だからこそシェラは何か不審に思った風もなくやはりにこと笑みを浮かべて。

「何をおっしゃっておられるんです。殿下にとってルニア様より、大切なことなど何もございませんよ。そもそも、お目覚めになられるまでこちらに留まりたいというのを、そうするとルニア様が逆に気になさると何とか説得してお仕事に向かって頂いたのですから、異変をお知らせするだけで、すぐに戻って来られます」

 おかしな夢なんて、殿下とお過ごしになられると、きっもすぐに忘れられますからね。
 だからどうぞ安心なさってください。
 そう告げるシェラには善意しか見えなかった。
 俺は内心で泣きたくなる。

(安心! 出来ないんですけど! だって、忘れるって、それってっ……! それってっ……!)

 内心を押し隠して、俺が何かを告げようとした、まさにその瞬間だった。

「ルニアっ!」

 バタンっ、シェラが入室した後、おそらく控えていた他の侍従かあるいは護衛によってだろう、閉められていた扉が勢い良く開かれる。
 大きな声での名を呼びながら駆け込んできたのは、キラキラと輝く金髪も眩しい美丈夫。
 俺はうっかり彼を見た瞬間、一瞬全てを忘れてしまった。

(あ~~~! 俺の最押し、やっぱりかっこいぃ~~~!!)

 そんな感動に支配されて。
 心配と顔に書いて、鬼気迫る勢いで近づいてくるのは当たり前と言えば当たり前。俺の伴侶たるラティだった。
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