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59・それぞれの答え③
しおりを挟む翌朝姿を現さなかったアーディに、俺は初め、国での用が少し長引いているだけなのだろうと思った。
とは言え、これまで、アーディ自身が告げた予定の通りに戻ってこなかったことなど一度もなく、それだけでも異常事態とは思えたのだがそれだけ。
ただでさえ数日戻っていなかったのだから、その所為もあるのだろうと、そう。
朝、と言っても、具体的に時間を決めていたわけでもない。
今まではだいたい俺が起きる頃にはちょうど、タイミングを計ったかのように姿を見せていたのだが、そちらの方がおかしいと言えばおかしくて、だけどそれを成しているのがアーディだったので。
彼ならばそのようなことも可能なのだろうと、深く考えもしなかったのである。
ある意味で信頼していたと言ってもいいのだろう。
少なくとも、俺にとってのアーディは再会した時と言い、いつも、図ったようなタイミングの良さを見せる存在であることだけは確かだった。だけど。
アーディに、休んでおくと言った通り、特に活動的に動くでもなく宿の部屋からも出ず、いつものように、俺の泊まっている宿も部屋も知っているアーディが、そこまで訪ねてくるのを待ち続け、そのまま昼になる頃には、流石の俺もおかしいのではないかと思い始めていた。
だって、前日、アーディは朝には合流すると言ったのだ。
時間を曖昧にすることなく、朝と。
「じゃあ、行ってくるね。明日の朝には合流できると思うから」
そんな風にいつも通りの顔で軽く告げて姿を消した。
そこまで思い出して、ああ、確かに、『できると思う』と言っていたかとも思い至って、ならやはりアーディの予想外のことでも起こって、延びているだけなのだろうとそう考える。
多分きっとそれは間違っていない。間違っていないに、違いないのだけれど。
陽はすでに高く、ただ部屋に閉じこもって待っているだけで昼を過ぎ、アーディと離れてから丸一日が経って、とりあえず俺は宿にもう一泊と頼んでおいた。
合流する予定の連れが遅れているからとそのまま告げて。
元より忙しい宿でもなく、部屋が空いていないということもなく、宿の主人は快く連泊を請け負ってくれ、俺は流石に宿から離れ、とは言え先に行く気にもなれず、周囲を散策して時間を潰すことにする。
何もない村は長閑で平和で。
前日と何も変わらない顔をしてそこにあった。
違うことは、傍らにアーディがいない事実だけ。たったそれだけがどうしてか、ひどい違和感となって俺を襲ってくる。
俺はなんとも言えないわだかまりを抱えながら、適当にその日は外で食事を摂って宿に戻り、まんじりともせず翌日を迎えたのだった。
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