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34・治癒魔術と軽食⑥
しおりを挟むそんな話をしている間に、使用人らしき女性が手早く、しかし丁寧にテーブルの上に食事の用意をしてくれていたようだった。
俺と、グローディとシェスと、それぞれ三人の前に置かれたのは、
「…………サンドイッチ……」
見覚えのある料理に驚く。
一口サイズに切られているし、とてもキレイに盛り付けられているが、何処からどう見てもサンドイッチだ。
貴族、だと聞いていたけれど、貴族もこういう食事なのかと戸惑った。
俺の呟きが耳に届いたのだろうグローディがにこと顔を綻ばせる。
「日本とおっしゃっていらっしゃったとお聞きしましたから。こういった物の方が食べやすいでしょう? どうぞ、手で構いませんよ」
一応とばかりフォークも用意されていたようなのだが、そのまま手で掴んでも構わないらしい。
小さく頷いたシェスも、フォークなどは使わず手を伸ばした。
一口サイズにカットされている、とは言え、流石に本当に一口では食べれなかったようでかじりついている。
どことなく仕草に品は感じられるけど、気取った雰囲気などはなく、あまり気にしなくてよいのかなと少しだけほっとした。
日本、の話をしたのはシェスに対してだったと思うのだけれど、グローディにも報告したということなのだろう。
なんとなくレシア様ではなく俺のことを気遣ってくれたように感じられて、少しだけ心が温かくなる。
グローディもやはり道具を使わず手を伸ばしたのを見て、俺もようやくサンドイッチに手を伸ばした。
なんとなく目で追っていると、グローディはかじりつくではなく、本当に一口で全てを口の中へと入れていて、しかも仕草が以外にも粗野で少しだけびっくりして、サンドイッチを手にしたまま一瞬、ぴたりと止まってしまう。
だけど、そんなグローディが、動きを止めた俺を不思議に思ったのだろう、小さく小首を傾げたので、はっと我に返って、慌ててサンドイッチにかじりついた。
美味しい。
でも、サンドイッチだ。
初めて食べた、そう思えるぐらいに美味しいけど、ただのサンドイッチ。
レタスと、トマトと卵が挟まっている、ごく普通のサンドイッチだ。
三口ほどで食べ終わって、飲み込んでから次に手を伸ばす。
今度の具材はツナマヨとチーズ。
何も変わった所なんてない。いうならばいっそ定番と言えるだろう。
それも食べきってしまったぐらいのタイミングで、グローディが、
「スープもありますよ」
と微笑みながら教えてくれた。
そこで初めて気付いたのだが、いつの間にかスープがテーブルの上に置かれている。
あとはオレンジ? か何かっぽいジュースと。
ちなみにスープは淡黄色で透き通っていて、クルトンっぽいものが幾つか浮いていた。
スプーンが側に添えられている。匂いからしても多分コンソメスープ。
見慣れたものばかりの軽食に、俺はなんだか嬉しくなりながら、あと二切ればかりサンドイッチを食べ、スープにも口をつけ軽食を終えたのだった。
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