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33・治癒魔術と軽食⑤

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 シェスがにっこりと微笑む。柔らかい笑顔。
 グローディは優しいし、とてもよく俺のことを気遣ってくれるし、俺にたくさん笑いかけてくれる。
 でもシェスの笑顔はそれと似ていて、やっぱり違った。
 グローディのそれよりももっとずっとただひたすらに穏やかなのだ。
 それはもしかしたらグローディの瞳には常に、俺に対する欲のようなものが見え隠れしているかもしれないし、否、俺はそれを嬉しいと思っているのだけれど、シェスにはそんなものが欠片もないからなのかもしれないし、もっと違う理由なのかもしれなかった。
 シェスがゆっくりと口を開く。

「ミーシュ様、私はあなたとグローディの……いいえ、レシア様とグローディの一番初めの子供です。ですから、グローディは私の父上なのです。ミーシュ様が目覚めた時に周囲にいた子供達、あの子たちは皆、私の妹や弟たちなのですよ?」

 ふふ、見えませんよね、なんて続けるシェスの言葉には陰りのようなものは少しもなかった。
 だけど俺はぴたりと固まってしまう。
 シェスの言葉が全く理解できない。
 だって見た目だけならば、グローディよりもシェスの方が年上に見えるのだ。
 なのにシェスがグローディの、子供? グローディが、父親?
 驚いて目を見開く俺を前に、シェスはやだ穏やかに微笑んだまま。

「え、でも、あの、見た目が……」

 こういったことは、果たして口にしていいのだろうか、迷いながらも訊ねると、シェスは小さく頷いた。

「そうですね。今はもう、見た目だけなら、私は貴方達を追い越してしまいましたね。ですが、それは何もおかしなことではありません。私自身が、なんと言えばいいのか……若くありたい、だとか思っていないというのもあるのですが、この世界はミーシュ様にとっては異世界で、魔法や魔力があるというのはお伝えしたでしょう? その魔力の影響で、見た目と年齢が噛み合わないことは往々にして起こり得るんです。ですから、たとえ一見、私の方が年上に見えても、私はグローディの子供なんです」

 シェスはとても丁寧に、何処までも柔らかく説明してくれる。
 俺は彼の言葉を頭の中で反芻した。
 異世界。魔法、魔力。
 それらは見た目にも影響するのだという。
 まったく理解しがたいことばかり。
 不思議だ。
 思いながら傍らに寄り添ってくれたままのグローディを見上げた。
 改めて見ても、シェスとグローディならやはりシェスの方が年上に見える。
 少なくとも、シェスのような、大きな・・・年齢の子供がいるようにはまったく見えなかった。
 目覚めた時にいたあの子供たち。あの子供達が精々と言った所だろう。
 それ以上だなんて。ああ、でもあの子たちより上の年齢の子は、学園に入っているからいないだけなのだとも言っていただろうか。
 そしてそんな子供たちの、一番上の子供がシェス。
 親子。
 シェスとグローディはよく似ている。親子だというのなら似ていて当然だろう、とは言え親子にはとても見えないけれど。

「そう……なの、か……」
「ええ、そうなんです」

 ぽつり、呟いた俺に、シェスはやはりやんわりと微笑むばかりだった。
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