上 下
22 / 52

21・俺のこと、そして⑥

しおりを挟む

 シェスが微笑む。その微笑みには、ほんの僅かな安堵が見て取れた。

「ミーシュ様がミーシュ様でよかった。でしたら、もう少しお話を続けますね。グローディはレシア様の伴侶です。ですが、今はレシア様のお体をミーシュ様がお使いですから、同時にミーシュ様の伴侶ともなります。お体が同じですから、どうしても別として扱うことが出来ません。それは、申し訳ございませんが、ご理解ください」

 俺がレシア様を、余程拒絶して見えているのだろう、シェスはどこか申し訳なさそうだった。だが、別に何もシェスが悪いことなんてない。
 俺はレシア様を自分だとは思えないけれども、同じ体を使用しているのは理解しているのだから。
 ならば、それはどうしたって。

「それは、俺も……仕方がないことだと思う」

 逆に今更、俺はレシア様から体を奪ったのではないかとさえ思い始めていた。
 シェスは頷いて話を続けていく。

「ミーシュ様の認識がどうであっても、お体が同じである以上、ミーシュ様以外にとってはミーシュ様はレシア様です。子供たちにとってもミーシュ様が今は母親なのです。ただ、今身ごもっていらっしゃるお腹のお子様以外は、6人ともしっかりと存在が成っていますし、そもそも子供の世話のほとんどは使用人の役目です。ミーシュ様ご自身が自らで行うことなどほとんどありません。同じ空間で過ごすことさえ、あえて言うなら、共に食事を摂るのと、後は日に数時間設けられている交流の時間程度でしょう。ですから、あの子たちに関してはおそらく、それほどご負担には思わずに済むはずです。ミーシュ様のお役目の一番重要なことは、今はお腹のお子様をしっかり守り育てることと、グローディに寄り添うことなのですから」

 シャスの言葉は、俄かには信じられなかった。だってあまりにも俺にとって都合・・がよすぎる。
 俺は正直、子供の存在に戸惑っている。いきなり6人もの子供たちの母親だと言われても、いったいどうすればいいのかわからない。
 受け入れられるはずがなかった。
 だけど、子供達との接触は最低限でいいのだという。実際の世話は、他に使用人が行うからと。
 俺は知らずきゅっと眉根を寄せていた。

「そんな、まるで貴族か何かみたいな」

 俺の感覚から言うと、少しばかり受け入れがたかったのだ。
 シェスは俺の発言にパチと驚いたように瞬きした。

「え、あれ? 貴族ですよ? 言いませんでしたか? グローディは辺境伯で、ミーシュ様は辺境伯夫人なんですよ? 辺境伯って、つまり貴族なんですが」

 俺は固まった。でも同時に、そう言えば最初に言っていたな、とも思い出していた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

黄色と緑色の調~王家に伝わる鏡の物語

香野ジャスミン
BL
この国には、昔から受け継がれてきた鏡がある。鏡に選ばれた者は次の国王となる。その鏡をめぐり、王家の者はある判断を下す・・・職人の父の元、一人前になるために日々、上達を目指すミル。明日、独り立ちと言う日の夜、彼の身に起こる出来事。幼いころから、鏡を通して親交を深めたあの人に・・・もう会えなくなる。彼の行動がその運命を動き出す・・ 鏡を通して通じ合った二人が、王家の決まりにより、婚約者となる。だが、この世には存在しない容姿は、狙われる原因となっていった。同時期に起る不運な出来事。それにより、王が下した決断が二人を再び結びつけることとなる。時の流れは同じ、だけど住んでいる環境は違うという設定となっています。 ※「ムーンライトノベルズ」にて別名にて公開している物を一部編集しております。内容は変わりません

チート魔王はつまらない。

碧月 晶
BL
お人好し真面目勇者×やる気皆無のチート魔王 ─────────── ~あらすじ~ 優秀過ぎて毎日をつまらなく生きてきた雨(アメ)は卒業を目前に控えた高校三年の冬、突然異世界に召喚された。 その世界は勇者、魔王、魔法、魔族に魔物やモンスターが普通に存在する異世界ファンタジーRPGっぽい要素が盛り沢山な世界だった。 そんな世界にやって来たアメは、実は自分は数十年前勇者に敗れた先代魔王の息子だと聞かされる。 しかし取りあえず魔王になってみたものの、アメのつまらない日常は変わらなかった。 そんな日々を送っていたある日、やって来た勇者がアメに言った言葉とは──? ─────────── 何だかんだで様々な事件(クエスト)をチートな魔王の力で(ちょいちょい腹黒もはさみながら)勇者と攻略していくお話(*´▽`*) 最終的にいちゃいちゃゴールデンコンビ?いやカップルにしたいなと思ってます( ´艸`) ※BLove様でも掲載中の作品です。 ※感想、質問大歓迎です!!

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

僕の宿命の人は黒耳のもふもふ尻尾の狛犬でした!【完結】

華周夏
BL
かつての恋を彼は忘れている。運命は、あるのか。繋がった赤い糸。ほどけてしまった赤い糸。繋ぎ直した赤い糸。切れてしまった赤い糸──。その先は?糸ごと君を抱きしめればいい。宿命に翻弄される神の子と、眷属の恋物語【*マークはちょっとHです】

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...