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21・俺のこと、そして⑥
しおりを挟むシェスが微笑む。その微笑みには、ほんの僅かな安堵が見て取れた。
「ミーシュ様がミーシュ様でよかった。でしたら、もう少しお話を続けますね。グローディはレシア様の伴侶です。ですが、今はレシア様のお体をミーシュ様がお使いですから、同時にミーシュ様の伴侶ともなります。お体が同じですから、どうしても別として扱うことが出来ません。それは、申し訳ございませんが、ご理解ください」
俺がレシア様を、余程拒絶して見えているのだろう、シェスはどこか申し訳なさそうだった。だが、別に何もシェスが悪いことなんてない。
俺はレシア様を自分だとは思えないけれども、同じ体を使用しているのは理解しているのだから。
ならば、それはどうしたって。
「それは、俺も……仕方がないことだと思う」
逆に今更、俺はレシア様から体を奪ったのではないかとさえ思い始めていた。
シェスは頷いて話を続けていく。
「ミーシュ様の認識がどうであっても、お体が同じである以上、ミーシュ様以外にとってはミーシュ様はレシア様です。子供たちにとってもミーシュ様が今は母親なのです。ただ、今身ごもっていらっしゃるお腹のお子様以外は、6人ともしっかりと存在が成っていますし、そもそも子供の世話のほとんどは使用人の役目です。ミーシュ様ご自身が自らで行うことなどほとんどありません。同じ空間で過ごすことさえ、あえて言うなら、共に食事を摂るのと、後は日に数時間設けられている交流の時間程度でしょう。ですから、あの子たちに関してはおそらく、それほどご負担には思わずに済むはずです。ミーシュ様のお役目の一番重要なことは、今はお腹のお子様をしっかり守り育てることと、グローディに寄り添うことなのですから」
シャスの言葉は、俄かには信じられなかった。だってあまりにも俺にとって都合がよすぎる。
俺は正直、子供の存在に戸惑っている。いきなり6人もの子供たちの母親だと言われても、いったいどうすればいいのかわからない。
受け入れられるはずがなかった。
だけど、子供達との接触は最低限でいいのだという。実際の世話は、他に使用人が行うからと。
俺は知らずきゅっと眉根を寄せていた。
「そんな、まるで貴族か何かみたいな」
俺の感覚から言うと、少しばかり受け入れがたかったのだ。
シェスは俺の発言にパチと驚いたように瞬きした。
「え、あれ? 貴族ですよ? 言いませんでしたか? グローディは辺境伯で、ミーシュ様は辺境伯夫人なんですよ? 辺境伯って、つまり貴族なんですが」
俺は固まった。でも同時に、そう言えば最初に言っていたな、とも思い出していた。
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