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28・お茶会の準備③
しおりを挟むようやく招待客が決まって、最後の確認にとラセア殿下にお見せした時、一瞬、ラセア殿下のお顔が曇ったことには気づいていた。
ただ、
「これは……いや、うん、そうだな、いずれにせよ……うん、いいんじゃないかな? 妥当な所だと思うよ。この家の者達なら大丈夫。何よりフィーヴィだもの。君におかしなことをする者なんていないよ」
何かを考え、お一人で納得なさったかと思うと、これでよいと判断なさったようだった。
多分何か、気になる方がいらしたのだとは思う。
ただ、今回はいずれにせよ、招待は家宛に送る予定となっていて、その中でどなたが出席なさるかはお返事を頂いた上で確認する予定となっている。
お茶菓子などはそれも踏まえ、少しばかり後々調整しようとも思っていた。
ラセア殿下が気に掛けるお家のお名前があったとして、どなたが参加なさるのかでもきっと変わってくる。
それに今回その方を避けても、避け続けるわけにはいかないのは間違いがなくて。
ラセア殿下はきっと、そう言ったことも考えられたのだろうと思った。
と、言うより、僕だから、というのはどういう意味なのか。
僕の出自からか、それとも。
考え出すと、なんだか嫌な気持ちになりそうだったので考えを停止する。
駄目だな、と思う。
最近の僕はとても気持ちが沈みがちだ。
趣味の一人遊びだって全然楽しくない。
気持ちいいことは間違いないんだけど。
でも僕は気付いてしまったんだ。玩具は結局玩具でしかないってことに。
玩具はどれだけ楽しんだって、ラセア殿下の代わりにはならない。だけど。
ラセア殿下は僕に優しい。いつもとっても気遣って下さるし、僕にきっと、気持ちを寄せて下さっているのは間違いない。
でも。
(せめてくちづけぐらい欲しい……)
つい、こうして近くにいると、視線が口元へと吸い寄せられた。
あるいは目を伏せたりした場合は股間に。
股間。
そこを使用した接触などは、今となってはもう、まだしばらくは難しいだろうことがわかっている。半ば諦めてもいる。
でも、なら、攻めて。
僕を見て、顔を赤らめて照れたり、
「か、かわいいよ……っ」
なんて、言ってくれる、だけじゃなく、もっと。
せめて、もう少しだけ、触れ合いたかった。
そうしたらきっと、この沈みがちな気持ちもずっと明るくなるんじゃないかそう思うのに言えなくて。
(僕は僕の為にラセア殿下を利用したいわけじゃない)
でも。
どうしても蟠る気持ちを、拭い去ることはできなかった。
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