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第二章・ペーリュ視点
2-56・確認と後始末①
しおりを挟むリーファを放せない私と、私から離れられないリーファの様子に水を差したのは、室内から聞こえてきた、呆れたような曽祖父の声だった。
「ペーリュ、リーファ、いつまでもそんなところにいないで、いったんこちらへ来たらどうだい」
言われてはたと気付く。今いる場所が廊下だったことに。すぐ傍にはラーヴィもいて、目のやり場に困っていると言わんばかりに視線を逸らしている。
流石の私も、少し申し訳ない気分になって、堪能していたリーファの唇を、ようやく話すことが出来た。
ちゅっと湿った音を立てて離れた唇を、うっすらと開いたリーファの潤んだ眼差しが名残惜しそうに追っていて、この様子ではおそらく、曽祖父の声も聞こえていなさそうだなと思うし、もっとリーファを放さずにいたくなったけれど、仕方がない。
「リーファ」
宥めるようにそっと頬を撫でて、代わりのようにぎゅっと、抱きしめる腕に力を込めた。
耳元に口を寄せてそっと囁く。
「大丈夫だよ、私はずっとここにいる。もうリーファから離れない。だから、今は、ね?」
「でも、」
私の言葉に、珍しくリーファがぐずる様子を見せてとてもかわいくて。何もかも放り出したくなってしまったけれど、流石にこの状況でそんなこと出来るはずもなくて。
「後でたっぷり。リーファが嫌だって言っても離さないから。大丈夫。大丈夫だから」
何とか宥め、しぶしぶ頷いたリーファを抱き寄せたまま促して、ようやく室内に戻った私達を、案の定、曽祖父は呆れた様子で迎え入れた。
一足先に室内に戻っていたらしいラーヴィも、何処か困った顔をしている。
それは、曽祖父の向かい側の席に腰掛けたままの魔術師塔の者たちも同じだ。
私はリーファを半ば抱えたまま、曽祖父の隣へと腰かけた。
今度はラーヴィが席には座らず側で控えている。
私にべったりとくっついたまま離れないリーファを見て、魔術師塔の者たちは何処か困ったような顔のまま、それでもほっと、安堵を滲ませた溜め息を吐いた。
「その様子を見る限りですと、上手く作用したようですね。よかった」
心底、肩の荷が下りたという様子に、私は頷いて。
「ああ。お前たちにも苦労を掛けたようだが……」
「いえ、元はと言えばわたくしたちの失態です。こちらこそ、リーファ陛下を巻き込んでしまって、大変申し訳ございませんでした。罰は如何様にも」
そもそも、リーファを戻すための研究は彼らの仕事からは逸脱していたはずだ。それを指しての私の言葉に、彼らは殊勝に首を横に振って、改めて謝罪の言葉を述べてくる。本当に反省しているのだろう、どのような罰でも受け入れるという覚悟が見て取れるような様子だった。
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