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第二章・ペーリュ視点
2-51・目覚めに向けて①
しおりを挟む流石に、一度曽祖父に助けてもらった時より前までほどではなくとも、いずれにせよリーファを放せず、慎重に、自身が重篤な魔力欠乏に陥らない程度にリーファへと断続的に魔力を注ぎ続けて更に数日。
やはり曽祖父より、件の魔術式が完成し、それを付与した魔道具も完成したとの知らせを受けたのは、私が寝台の中でリーファを大切に抱きしめたまま、体を休めていた時だった。
少しばかり、魔力は不足気味ではあるものの、臥せるほどではなく、起きるのに支障はなかったので、部屋の外で待ってもらい、素早く身支度を整えた。
私はもとより、リーファも共に連れて行かねばならないだろうから、数日ぶりに服を着せかける。
此処へ来てもらうことも出来たのだけれど、可能な限りこの部屋へは誰であっても通したくはなくて、リーファの方を連れ出すことにしたのである。
リーファは身体的にどこか不調になっているわけではなく、今はリーファ本人の精神的な物を考慮し、眠らせているだけで安静にしておかなければならないような状態にはなく、移動させることも特に問題とならないからこその選択だった。
気配で察したのだろう、曽祖父はリーファを抱えて扉の所まで行くと、タイミングを見計らったかのようにドアを開けてくれ、眠ったままのリーファを見ると、そっと頬に触れ顔色を確かめた。
「うん。特に問題はなさそうだね」
私も頷く。
「ええ、あれ以降、苦しそうにしている様子もありません」
はじめ、混乱して気を失った時には意識を失ったままでも苦しげな表情へと顔を歪めていたのだけれど、曽祖父と一度話して、自らの意思で眠りに落ちて以降はそのようなこともなく、ずっと健やかに眠ったまま。何処までもいつも通りの様子だった。
「そう。よかった。お前も……少し魔力は不足気味かな? とは言え、特に不調になるほどではない、か……」
次いで私の顔色まで覗き込んできた曽祖父は、だけど、先日、曽祖父に助けてもらった時ほどには、私の状態が悪くはないことを確かめて、安心したように微笑んだ。
その眼差しが、少しばかり面映ゆい。
まるで自分が小さな子供にでもなったかのような気になって。とは言え、実際曽祖父にとっては大差ないとは思うのだけれど。
曽祖父は、少し居心地の悪そうな私を見てくすと笑い、大きくは構わず、先を促した。
「なら、さっそく急ごうか。応接スペースに待たせてあるんだ」
待たせているのは、問題となった魔術師塔の者たちなのだろう。
曽祖父に導かれるままに、私はリーファを抱えて彼らの元へと歩みを進めた。
それはたった数日。だけど私にとっては、ひどく長く感じられた日々を、終わらせるための歩みなのだった。
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