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第二章・ペーリュ視点
2-46・魔力欠乏②
しおりを挟む曽祖父は溜め息を吐いて、すぐ傍まで歩み寄ってきたかと思うと、さっと私の手を取り、素早くその手を曽祖父自身の方へと回したかと思うと、ぐっと力強く私を支えた。
「典型的な魔力欠乏の症状だね。辛いだろう。体重をかけても構わないよ。落ち着ける所に行こう」
言いながら、危なげない足取りで一番近くの応接室まで進んでいく。
「すみません、助かります……」
私は殊勝に感謝を口に乗せた。自分一人ではしっかりと歩くことさえできないだろう自覚があった。
部屋を出た段階でもうすでに、一歩だって動けそうもなかったのだ。
頭痛が止まず、眩暈がして、地面がずっと揺れている。耐えきれないような吐き気に、しかし辛うじて嘔吐することだけは堪えて。
「嘔吐は、出来るだけ我慢して。体力を使うし、今の状況ではおそらく吐いたって楽にならない。むしろ体内の魔力を外に出すことになるから、余計にひどくなるだろう」
曽祖父からの注意に私は頷いた。
わかっている。それぐらいの知識はあった。
しかし、それにしてもやけに具体的だが、曽祖父も魔力欠乏に陥ったことがあるのだろうか。
私は今回のこれが、実の所、生まれてはじめての不調のようなものなのだが。
知識では知っていたので理解はしている。だが。
先程の、私の状態を正確に言い当てるかのような注意は、まるで経験があるかのようだった。
程なくして運び込まれた応接室で、曽祖父の手を借りて、私はソファの上へとぐったりと横になった。
そうなってさえ、地面の揺れはひどく、頭痛も眩暈も一向に改善されない。
しばらくはこのままなのかもしれないとうんざりする。でも。
リーファ。
今は眠ったままのリーファを思うと、私はどうなっても、魔力は注ぎ続けなければならないのだ。私以外の魔力など、ほんの僅かだって、私はリーファに流されたくないのだ。ならば私がしなければ。
リーファに触れるのは私だけだ。
すっかり参っている私の額へと、傍らに跪いた曽祖父がそっと手を当ててきた。そのままふわっと治癒魔術が施される。
途端に頭が割れそうだった頭痛が、すぅっと緩和されていく。
曽祖父はまたしても溜め息を吐いた。
「リーファには、お前、触られたくないんだろう? なら、僕が治せるのはお前の方だね。これくらいは許容するように。でなければリーファの前にお前がもたない」
私が僅かばかり、抵抗感を覚えたことに気付いたのだろう、すかさずそう言い付けてきた曽祖父の手を、だから私は受け入れることしかできなかった。
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